質問主意書

第104回国会(常会)

質問主意書


質問第三七号

円高及び原油価格の低下等に伴う差益の還元に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年四月十四日

鈴木 一弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   円高及び原油価格の低下等に伴う差益の還元に関する質問主意書

 最近における急激な円高の進行と、原油価格の低下等に伴い、これに関連する諸産業には膨大な差益が発生しており、その規模は、電気・ガス業界だけでも一兆円を超えるものとみられている。
 一方、多くの公共料金は、かつての二次にわたるオイルショックを契機としたエネルギーコストの上昇を前提とした考え方に基づいた料金体系が形成されており、最近の原油価格や為替相場を前提としたコストとの間に大きな歪みが生じている。このため、需要家の間からは、円高や原油価格の低下等に伴つて発生した差益の還元を求める声が強まつている。
 従つて、政府は、差益還元のための具体的な検討の実施に当たつては、エネルギーコストの低下等にもかかわらず過大な料金の負担を強いられている全需要家への還元を原則として実施するとともに、電気・ガス事業以外で円高や原油価格の低下等のメリットを享受している分野においても、消費者に対する利益の還元が適切に行われるよう指導を強めるべきである。
 このような観点に立つて、以下具体的に質問する。

一 タクシー料金の引下げについて

 第一次・第二次のオイルショックの際は、原油価格の暴騰による燃料費の上昇を主たる理由にして大幅な料金の値上げがなされた。
 つまり、都内を例にとると初乗運賃で昭和四十七年は百七十円であつたものが、昭和五十四年には三百八十円、加算運賃も三十円から七十円と二倍以上に値上げされた。
 現在は原油暴落と円高であり、逆オイルショックということから、その差益は、料金引下げで消費者に還元すべきと考えるがどうか。

二 国内航空運賃の引下げについて

 タクシー料金と同様にオイルショック後の航空運賃を見ると、東京-大阪間で昭和四十七年に七千三百円であつたが、昭和五十五年には約二倍の一万四千百円になつている。当然、料金引下げを行うべきであると考えるがどうか。

三 その他の公共料金について

 更に、国際航空運賃、国際通話料金、バス料金等、原油値下がりとか円高のメリットを受ける公共料金についての差益還元について、政府はどう考えているか。

四 輸入麦の標準売渡価格の改定について

 食糧管理特別会計の輸入食糧管理勘定において経理されている食糧用輸入麦の標準売渡価格については、毎年十二月に決定されている。しかし、最近における円高は、六十一年度予算編成の基礎として用いられている為替レートをはるかに上回る水準であり、国際穀物相場も想定以上に低落している。
 政府は、輸入麦をめぐるこのような経済事情の大きな変化に対応して、飼料用麦の政府売渡価格については、円高等のメリットが配合飼料価格により強く反映されるよう引き下げるとともに、これまで五次にわたつて引下げが実施された配合飼料価格についても、輸入コストが適正に反映されるよう指導すべきであると考えるがどうか。
 更に、小麦を原料とする製品の価格引下げについてどう考えるか。

五 輸入牛肉価格について

 畜産振興事業団が一元輸入を行つている牛肉については、既に策定された「円高関連対策」の一環として、全国にある約三千店の指定販売店に対する値引販売や月一回の「肉の日」を増やすことにより、円高差益の消費者への還元を行う予定といわれている。しかし、六十年度に四十億円、六十一年度には二百億円にのぼるとみられている円高差益がこの程度の措置により還元されるとは考えられない。
 従つて、政府は、行政管理庁が去る五十八年一月に行つた「畜産物の生産及び流通に関する行政監察結果報告書」において指摘している事業団売渡方法の改善を含めた実効ある措置を講ずべきものと考えるがどうか。
 また、先に決定をみた加工原料乳保証価格の引下げは、農家の飼料価格購入費が低下したことを強く反映したものとなつているが、基準取引価格の引下げ、乳製品指標価格の引下げという一連の措置も、末端における乳製品価格の引下げに連動しない限り、生産者に犠牲を強いる結果に終わつてしまうといわざるを得ない。
 従つて、政府は円高によるメリットが最終消費者に及び、その結果として乳製品需要の拡大が図られ、限度数量の拡大を通じて生産者にもメリットが還元されるという好循環を実現するよう努力すべきであると考えるがどうか。

  右質問する。