質問主意書

第104回国会(常会)

質問主意書


質問第一四号

衆議院解散権の帰属に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年二月二十五日

飯田 忠雄   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   衆議院解散権の帰属に関する質問主意書

 従来実施された衆議院の解散は、内閣の助言と承認による天皇の国事行為に関する憲法第七条を根拠として内閣に衆議院解散の実質的決定権があるものとして行われた。
 このような方法での衆議院の解散は、天皇の国事行為をして国政行為たらしめるものにほかならず、憲法第四条第一項の明文に違反する。憲法第七条の内閣の助言と承認は、天皇の国事行為が国政行為となることを防止するための役割を有するものと解するのが、他の憲法の明文との関連からみるときは正しいといわねばならない。憲法第七条は、天皇の国事行為の成立要件として内閣の助言と承認を求めているにすぎない。それは、いかなる意味においても、内閣に対し憲法の明文のないことを授権する規定ではない。
 そこで私は、衆議院解散権の明文の根拠は、憲法第四十一条にあると考える。その理由は、以下のとおりである。
 そもそも衆議院の解散は、立法にも司法にも、また行政にも属する行為ではない。その場合、そのような行為はどこが行うべきかといえば、憲法第四十一条で「国権の最高機関」とされているところの国会が行うべきものと解すべきである。すなわち、国民主権の下では、衆議院の解散というような国家統治の根本に関する行為は、本来、主権者たる国民が行うべきものであるが、その現実の行使は、全国民の代表者である国会によつてなされるものと考えられるからである。憲法において、国会が国権の最高機関であるとされているのは、まさにこのことをいつていると解されるのである。
 この見解に照らせば、次のように考えられる。

(一) 衆議院の解散は、国会の議決によりその実質的決定がなされるべきものである。

(二) そうであれば、衆議院の解散権は、政治的・実際的には、国会における多数党の党首である内閣総理大臣に帰属している、ということができる。

(三) 衆議院の解散については、衆参両院の議員がその議案を提出することができるほか、憲法が議院内閣制を採用していることから、内閣総理大臣も憲法第七十二条の規定により内閣を代表して衆議院解散議案を提出することができる。

(四) 国会が衆議院の解散の議決をしたときは、内閣はこれをうけて、国事行為の助言と承認をなすべきである。(この点については、同旨の第十三回国会両院法規委員会の勧告がある。)

 以上のように考えるが、これらについて、政府は、それぞれどのような見解を持つているか、明らかにされたい。

  右質問する。