質問主意書

第104回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇号

国家秘密保護法制定をめぐる動きに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年二月五日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   国家秘密保護法制定をめぐる動きに関する質問主意書

 自由民主党の議員立法の形で第一〇二回国会に提出され、前国会において、国民各界各層の反対の声の前に廃案となつた「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」が、自由民主党によつて装いを新たに再提出されようとしている。
 国家秘密を保護するためのこの種の立法は、国民の基本的人権とも重大なかかわりをもつものであり、以下、内閣に対して、関連する問題について質問する。

一 日本がスパイ天国だという、いわゆる「スパイ天国論」が、中曽根総理により繰り返し述べられている。
 昨年十二月十九日の参議院の内閣、地方行政、文教、農林水産の各委員会による連合審査会において、私の質疑に対して、総理は、「日本ぐらいスパイ天国はないのだ、これをそのまま放置することは独立国家の平和、安全を維持するためにもそれはとるところではない。したがつて秘密保護は必要である」と答弁している。
 そこで伺うが、総理の言う「スパイ天国」とは、具体的にはどういうことを指しているのか明らかにされたい。また、日本がその「スパイ天国」であるという事実を実証的に示されたい。

二 (1) 自由民主党政務調査会編集にかかる「スパイ防止法-その背景と目的」(昭和五十七年十一月)に掲載されている「主要スパイ検挙一覧表」によれば、昭和二十九年から五十六年までの二十八年間に十三件のスパイ事件があつたというが、その内容は、「独立国家の平和・安全」との関連は薄いと思われ、また、それを脅かすものとは言い難いものである。この程度の事実をもつて「日本はスパイ天国である」とするのか。
  (2) このような議論は、ちようど、「ソ連脅威論」を唱えて軍備強化を図ることと軌を一にした、外患を利用して世論を操作しようとするような権力者の常套手段であつて、為にする議論であるといわざるを得ない。
 したがつて、現行法で十分対処できる前記一覧表の十三件の事件だけでは、国民の基本的人権と重大なかかわりがある国家秘密保護法について、その制定の必要性は出てこないと考えるがどうか。

三 政府は、主権者たる国民の基本的人権を尊重するのであれば、国民の知る権利、またその具体化である「情報公開法」の制定こそ急ぐべきであり、また熱意をもつて検討すべきであると考えるが、この点についてはどうか。政府の見解を承りたい。

  右質問する。