質問主意書

第103回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一〇三第三号

  昭和六十年十一月五日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員秦豊君提出防衛政策の基本に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員秦豊君提出防衛政策の基本に関する質問に対する答弁書

一から四までについて

(一) 「専守防衛」という用語は、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限られるなど、憲法の精神にのつとつた受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであり、我が国の防衛の基本的な方針である。
 また、「戦略守勢」という用語は、我が国の防衛力の運用面において、「専守防衛」と同じ意味で使用していたものである。
(二) 我が国の防衛力行使の態様は、具体的な状況に応じて異なるものであるが、その地理的範囲が必ずしも我が国の領土、領海、領空に限られるものでないことは、政府が、自衛権の行使につき従来から一貫して明らかにしているところである。

五について

 自衛権の発動としての武力の行使は、自衛権発動の三要件に該当する場合に限られるが、現実の事態において我が国に対する武力攻撃がどの時点で発生したかは、その時の国際情勢、相手国の明示された意図、攻撃の手段、態様等々により判断されるものであり、限られた与件のみ仮設して論ずべきではないと考える。

六から九までについて

(一) 我が国は従来から我が国に対する武力攻撃が発生した場合において、周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域において、自衛の範囲内で海上交通の安全を確保し得ることを目標に海上防衛力を整備してきている。
(二) 中期防衛力整備計画の実施により海上交通の安全を確保するため必要な対潜能力については、相当程度向上するものと考えているが、洋上防空能力については、更に、総合的な検討を行うこととしている。
 また、本土防空能力については、本計画の実施により、相当程度向上するものと考えている。

十及び十一について

(一) 我が国は憲法及び基本的な防衛政策に従い、自ら適切な規模の防衛力を保有するとともに、米国との安全保障体制を堅持することにより国の防衛を図ることを基本としている。
(二) 政府としては、このような考え方に立つて、引き続き、日米安保体制の信頼性の維持向上のための各種施策の推進に努めていく必要があると考えている。

十二について

 我が国は、「防衛計画の大綱」に基づき防衛力の整備を進めているところであるが、我が国の防衛力の現状は、いまだ大綱の定める防衛力の水準に到達していない。