質問主意書

第103回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一九号

ツツガムシ病対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年十二月六日

鶴岡 洋   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   ツツガムシ病対策に関する質問主意書

 ツツガムシ病は、かつて「死の風土病」と恐れられていたが、昭和四十年代の初めには、ほぼ撲滅状態となつていた。
 しかし、四十五年ごろから患者が発生しはじめ五十年代の後半から全国各地で患者が急増し、五十九年は、二十八都府県に広がり、今年は、ツツガムシ病が全国的に猛威をふるい、既に五人が死亡、患者は千人を突破する勢いである。
 ツツガムシ病には、古くから知られている秋田、山形、新潟県下の河川流域で夏期に発生するアカツツガムシを媒介とする古典型と、戦後発見されたフトゲツツガムシ、タテツツガムシ等の媒介による新型といわれるものがある。
 現在、全国的に発生しているのは、新型のものであると聞く。ツツガムシ病の病原体のリケッチアを媒介するツツガムシの幼虫のうち、タテツツガムシの幼虫は、十一月、十二月に発生し、患者も十一月、十二月に急増するため、最近の患者多発状況から、その予防、治療対策が急がれるところである。
 以上の観点から質問する。

一 最近患者が急増した理由として

(1) BHC・DDTなどの殺虫剤の使用禁止
(2) 山林開発などで、野ねずみに寄生するダニの一種のツツガムシが畑地や居住地の近くに進出
(3) クロラムフェニコール(クロマイ)、テトラサイクリン系抗生物質の使用制限

などといわれている。
 新型がなぜ急増したのか、新型の特徴と患者急増の原因についてどう解明したのか、伺いたい。
 また、患者が感染する経路ならびにツツガムシ病の特徴的自覚症状についても、この際明らかにされたい。
 あわせて、過去五年間の患者発生状況を都道府県別に示されたい。

二 古典型ツツガムシ病は、致命率が三十パーセントと高く、危険な病気であつたが、新型は早期に発見し適切な治療さえ行われれば、それほど恐れられる病気ではないといわれる。
 ツツガムシ病治療には、抗生物質(合成ペニシリンやセファロスポリン系)が効かないため、早期に診断を行い、効果的な抗生物質への切替えが望まれるところである。
 「幻の病気」といわれたツツガムシ病も四十年代には患者数も激減したため、今日ツツガムシ病の診断経験もない医師が多く、患者の発見が遅れ、すでに今年は五名が死亡している。
 効果的な抗生物質の開発や患者の早期発見が急がれるが、政府の見解はどうか。
 また、現在考えられるもつとも有効的な治療方法とは何か、伺いたい。

三 厚生行政科学研究費による「ダニ媒介性リケッチオージスに関する調査研究」報告によると、五十五年度にツツガムシ病で死亡者三名がでたことは衛生行政担当者及び臨床医のツツガムシ病に対する認識不足が原因とされ、その対策が緊急課題であると指摘している。この報告を、どう行政に反映させたのか、具体的に伺いたい。
 特に、患者数の多発している県に対して、どのような指示をされたのか明らかにされたい。

四 ツツガムシ病に係る対策費は、五十二年度から五十五年度まで調査研究費が計上されていたが、五十六年度以降は計上されていない。
 ツツガムシ病対策費が計上されなくなつた理由を明らかにされたい。
 これまでの患者数の増加をみると、今後も全国各地で多発することが懸念される。そこで、予算措置等、ツツガムシ病の絶滅に向けての対策を伺いたい。

  右質問する。