質問主意書

第102回国会(常会)

答弁書


答弁書第六一号

内閣参質一〇二第六一号

  昭和六十年七月十二日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員藤原房雄君提出スパイクタイヤ粉塵公害対策の促進強化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員藤原房雄君提出スパイクタイヤ粉塵公害対策の促進強化に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 昭和五十八年九月の環境庁大気保全局長通達を受けて、スパイクタイヤの使用自粛に関する要綱が昭和五十九年度末現在、十道県において制定されるなど使用期間制限を中心とする対策が実施されている。
 この結果、北海道、宮城県等における主要都市においては、春期におけるスパイクタイヤのはき替えが促進され、その効果として、当該時期における降下ばいじんの量が減少する傾向がみられる。
 なお、仙台市においては、スパイクタイヤの使用自粛の対策の推進により、冬期においてもスパイクタイヤの装着率及び降下ばいじんの量が大幅に減少した。
(2) 環境庁が昭和五十七年度に札幌市、昭和五十八年度に仙台市において実施した「スパイクタイヤによる粉じん等実態調査」の結果によれば、交通量の多い幹線道路の沿道の測定地点における浮遊粒子状物質の濃度並びに環境基準を超過した時間数及び日数は、それぞれ表一及び表二のとおりである。

表一 装着期及び非装着期の浮遊粒子状物質濃度

表二 仙台市における浮遊粒子状物質濃度の測定結果の環境基準との関係

(3) 運輸省において昭和五十八年度から三年計画で実施している「スパイクタイヤ等対策技術調査」の現在までの検討結果は、次のとおりである。

(一) スパイクタイヤのスパイク本数、スパイクのフランジ径等と舗装摩耗量等の定量的な関係を把握した。
(二) スパイクタイヤ及びスパイクレスタイヤについて、圧雪路面上における制動性能、発進加速性能及び坂道発進性能に係る比較試験を行つたところ、制動性能では大きな差が見られる場合があるが、全体的な傾向として両者の差は小さい、との結果が得られた。
 また、運輸省においては、引き続き、昭和六十年度に凍結実路上における制動性能、坂道発進性能等の調査を行うとともに、スパイクタイヤの有効な評価方法を確立するため、昭和五十九年度から三年計画で「スパイクタイヤの性能等の評価法に関する調査」を実施しており、これらの調査結果を踏まえて、スパイクタイヤの構造基準の策定につき検討を進めていくこととしている。

(4) 社団法人日本自動車タイヤ協会がスパイクタイヤの路面損傷に関する実験データに基づき計算したところによれば、スパイクタイヤ第一次基準の施行による粉じん削減効果は、十パーセント強と推定されている。
 第二次基準の策定については、社団法人日本自動車タイヤ協会が鋭意検討を行つてきたところであり、路面損傷の程度を現行の第一次基準よりも三十パーセント程度低減させることを内容とする基準を近々策定する予定と承知している。

二について

 スパイクタイヤの装着により、多量の粉じんが発生した場合、目、鼻、のど等に刺激症状が認められるという報告がある。
 しかしながら、慢性的な影響については、職域におけるじん肺が高濃度かつ長期間の暴露を受けて初めて発症するといわれていることなどから現時点で評価することは困難である。
 このため、環境庁では、昭和五十九年度からスパイクタイヤによる粉じんの小動物への長期暴露実験を実施しており、当面その結果を待つこととしている。

三について

(1) 政府としては、関係省庁間における一層の連携を図りつつ、関係地方公共団体、関係業界等とも協力し、スパイクタイヤの改良、スパイクタイヤの使用期間の短縮に効果がある箇所での除融雪の実施、スパイクタイヤの使用期間の制限等の対策を総合的に推進することとしている。
(2) 道路の損耗等は各種の要因により生じており、スパイクタイヤのみに起因する道路の損耗等による地方公共団体の財政負担を把握することは困難であるが、今後とも関係省庁において、その把握に努めることとしている。
 また、現行のスパイクタイヤ対策に要する予算については、今後ともその確保に努めるとともに、地方公共団体の負担の問題については、今後講じられるスパイクタイヤ対策に伴う地方公共団体の負担の実態を見ながら検討してまいりたい。
(3) 本研究は、研究開始後一年余しかたつておらず、実用化の可能性について明確にできる状態には至つていない。
 また、一部の企業において、電子制御技術の活用により、積雪・凍結路面走行時等における制動性能等を高める技術の開発等が行われているところであるが、現時点では当該技術のみでスパイクタイヤに代替し得るものではないと承知している。政府としては、引き続き各企業における技術開発動向を注視してまいりたい。

四について

 スパイクタイヤの法的規制については、スパイクタイヤが冬期道路交通の安全の確保に果たしている役割を踏まえつつ、道路の除融雪の困難性、タイヤの改善状況、住民のコンセンサス等について十分配慮する必要があり、現在、これらの問題を含めて慎重に検討中である。