質問主意書

第102回国会(常会)

答弁書


答弁書第二二号

内閣参質一〇二第二二号

  昭和六十年二月二十二日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員喜屋武眞榮君提出沖縄県金武町における殺人事件と日本の捜査権に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員喜屋武眞榮君提出沖縄県金武町における殺人事件と日本の捜査権に関する質問に対する答弁書

一について

 沖縄県警察は、本年一月十六日、沖縄県国頭郡金武町に所在する自宅において被害者が背中を刺され死亡している旨の被害者の妻からの通報により、事件を認知し、石川警察署に捜査本部を設置して鋭意捜査を実施した。同警察は、右捜査の結果、米海兵隊員であるケルベン・L・ルイスを被疑者として、米軍当局の十分な協力を得てその取調べを行うとともに所要の捜査を行つて、二月七日本件を住居侵入・強盗殺人被疑事件として那覇地方検察庁に送致した。二月二十日現在、なお捜査中である。

二及び十三について

 沖縄の復帰後における米軍人による日本人等を被害者とする殺人事件(強盗殺人、強姦致死、傷害致死を含む。)の発生状況は、別表のとおりであるが、一般に殺人等の凶悪事件の発生は、様々な要因に基づくものであり、それが何に起因するかを断定することは困難である。
 なお、これらの事件に係る請求権は、日米地位協定第十八条6の規定に基づき処理されている。

三について

 今回の事件の被疑者ルイスに対しては、日米地位協定第十七条の規定により、日米双方が裁判権を有しているが、第一次裁判権は、我が国当局が有する。

四について

 我が国の法令によつて罰することができる罪に係る事件について、我が国が捜査権を有していることは言うまでもない。他方、米軍も日米地位協定第十七条10の規定により一定の範囲で警察権が認められている。

五、七及び八について

 御指摘の被疑者は、二月二十日現在、殺人の容疑で米軍当局により拘禁されていると承知している。
 なお、被疑者の身柄引渡しについては、沖縄県警察において、一月十八日に石川警察署長が米海軍調査局沖縄所長に対し、また、一月二十一日に刑事部長が在沖縄米軍四軍調整官に対し要請し、米側は、日米地位協定第十七条5(c)の規定に基づき引き続き被疑者の拘禁を行う旨回答してきた。

六及び十四について

 捜査当局は、事件発生直後から、米側に協力を要請し、その協力を得て鋭意捜査を進めてきている。また、政府は、日米合同委員会の場等を通じ、米側に対し綱紀粛正・再発防止等の申入れを行つた。なお、米側は、本件について遺憾の意の表明を行うとともに、捜査に全面的に協力してきている。

九及び十二について

 日米地位協定第十七条5(c)の規定は、第一次裁判権を行使すべき我が国の立場及び自国軍隊の構成員等を保護するという米側の立場の均衡を図る上で相当なものであり、政府としては、同規定を改正することは考えていない。また、米側は、日米地位協定の規定に基づき本件に対処しているものであり、政府としては、問題はないと考えている。
 なお、NATO諸国間で締結されている同種の協定(いわゆる「NATO協定」)における刑事裁判権に関する規定は、日米地位協定におけると同様の規定振りになつていると承知している。

十及び十一について

 本件においては、被疑者の身柄の連行、証拠の収集等、米軍当局の十分な協力を得て円滑に捜査が行われてきている。
 なお、御指摘の事件の場合は、被疑者の身柄が日米地位協定第十七条5(c)にいう「合衆国の手中にあるとき」に該当しなかつたことから、我が国警察当局が米軍当局の同意を得て施設区域内で被疑者を逮捕したものである。

別表 1/4

別表 2/4

別表 3/4

別表 4/4