質問主意書

第102回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三号

内閣参質一〇二第一三号

  昭和六十年一月二十二日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員吉川春子君提出義務教育未修了者に対する対策と夜間中学校の充実・拡大に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員吉川春子君提出義務教育未修了者に対する対策と夜間中学校の充実・拡大に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 学校教育法により九年間の義務教育を受けるべき者のうち、義務教育を修了していない者の数を把握することは極めて困難であるが、学校基本調査、国勢調査報告等を基に推計してみると、約七十万人程度と考えられる。ただし、これには病弱等の事由により就学義務の猶予・免除を受けた者が相当数含まれている。
(2) 国勢調査報告による未就学者は、昭和四十五年の五十七万二千九百七十九人に対し、昭和五十五年には、三十万八千四百十五人と半減している。
 未就学の原因については、調査対象とされていない。
(3) 学校基本調査によれば、昭和五十年度から昭和五十七年度までの各年度に、通算五十日以上欠席した長期欠席児童生徒数の累計は、小学生延べ十九万三千七百三十人、中学生延べ二十三万二十六人、計延べ四十二万三千七百五十六人となつており、病気を理由とする者がその過半数を占めている。
 なお、右の累計には、同一人が重複して算定されている場合があり、長期欠席児童生徒の実数は把握できない。
(4)及び(5) 長期欠席児童生徒のうち、義務教育未修了のまま学齢を超過した者の人数及びその長期欠席児童生徒数に対する比率は把握していない。また、義務教育未修了者の実態を把握することは困難である。

二について

 義務教育未修了のまま学齢を超過した者については、市町村は、その設置する小・中学校に受け入れなければならないものではないが、これらの者についても、学習意欲のある限りは、これを尊重して学習の機会について配慮がされるべきであると考えており、現在、学校の収容能力や施設、設備等の状況が許す範囲内において、小・中学校に受け入れているところである。
 ただ、これらの義務教育未修了者は年齢や職業等により、学習の目的や必要とする教育の内容等が様々であるので、それぞれの実態に即し、幅広く教育の機会が得られるようにすべきであると考えている。

三について

(1) 中学校夜間学級(いわゆる夜間中学)は、発足当初は、生活困窮などの理由から、昼間に就労又は家事手伝い等を余儀なくされた学齢生徒等を対象として、夜間において義務教育の機会を提供するため、中学校に設けられた特別の学級であり、その果たしてきた役割は評価されなければならないと考えている。現在、中学校夜間学級には義務教育未修了のまま学齢を超過した者が多く在籍しているが、現実に義務教育を修了しておらず、しかも勉学の意思を有する者がいる以上、これらの者に対し何らかの学習の機会を提供することは必要なことと考えている。この点については、今後とも生涯教育の観点から配慮する必要があるが、当面、中学校夜間学級がこれらの者に対する教育の場として有する意義を無視することはできない。
(2)から(5)まで 中学校夜間学級は、市町村教育委員会が地域や学校の実態等諸般の実情を勘案の上、その必要があると判断した場合に設置し、その周知をも図るものと考える。
 夜間学級を置く中学校については、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律により算定した学級数等に基づき教職員定数を措置し、教職員給与費等を義務教育費国庫負担法により、また、これらの学級数に応じて建物建築費を義務教育諸学校施設費国庫負担法により、それぞれ国庫負担している。
 なお、中学校夜間学級調査費については、今後とも厳しい国の財政事情等をも踏まえて適切に対処してまいりたい。