質問主意書

第102回国会(常会)

答弁書


答弁書第一二号

内閣参質一〇二第一二号

  昭和六十年一月十一日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員立木洋君提出日米諮問委員会報告などに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員立木洋君提出日米諮問委員会報告などに関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 今次日米首脳会談において特に日米諮問委員会の報告(以下「報告」という。)が基調となつたということはない。なお、「報告」が日米双方による真剣な検討に値するものである点については、日米首脳の意見が一致している。
 政府としては、「報告」を全体として真剣に研究、検討しているところである。

四について

1 政府としては、「報告」中の個々の具体的提言については実行の可否を含め、研究、検討しているところである。
2(1)及び(2) 「報告」は、政府の作成になる文書ではないので、個々の表現、用語等が具体的に何を意味するかについて、政府として述べる立場にはない。
 (3) 今次日米首脳会談においては、日米関係の展望とともに、東西関係やアジア情勢等の国際情勢につき広く意見交換を行つた。

3 太平洋を囲む地域は、大きな発展の可能性を秘めている。太平洋協力は、こうした可能性を引き出し、この地域の発展及び世界の平和と繁栄に寄与すべく、経済・文化等の分野での自由かつ開放的な協力を目指すものである。もとより、太平洋協力は、大東亜共栄圏とは関係がない。
4(1)及び(2) 「日米安保のNATO化」として具体的にいかなることが想定されているかは定かでないが、政府としては、今後ともNATOとの間で、世界各地の情勢に関するものを含め、必要に応じて種々の意見交換を行うことがあると考える。
 (3) 政府としては、御指摘のような会議を行うことについては、検討していない。

5 我が国は、かねてから中米問題の解決には域内の努力が肝要であると考えてきており、この意味でコンタドーラ・グループ諸国等による域内の和平努力を強く支持してきているところである。このような域内和平努力が行われている現状において、中米問題の当事国ではない我が国としては、事実関係を十分把握することが困難なこともあり、ニカラグァと米国の行動につき立ち入つたコメントをすることは差し控えたい。いずれにせよ、我が国としては、コンタドーラ・グループ諸国の努力と関係諸国の協力によつて中米問題の平和的解決が早期にもたらされることを強く期待するものである。
6 御質問のシュレシンジャー氏の発言は、一私人として行われたものであるので、政府としてこれに対し見解を示すことは差し控えたい。
7及び8 「報告」は、政府の作成になる文書ではないので、個々の表現、用語等が具体的に何を意味するかについて、政府として述べる立場にはない。
 政府としては、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準にできるだけ早期に到達したいと考えており、現在、これを見直すことは考えていない。
9 我が国は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合において、我が国周辺数百海里、航路帯を設ける場合はおおむね千海里程度の海域において、自衛の範囲内において海上交通保護を行い得ることを目標に、逐次海上防衛力の整備を行つているところである。
 我が国が自衛権の行使として我が国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することのできる地理的範囲は、必ずしも我が国の領土、領海、領空に限られるものではないことについては、政府が従来から一貫して明らかにしているところであるが、それが具体的にどこまで及ぶかは個々の状況に応じて異なるので一概にはいえない。
10(1) 昭和五十一年の三木内閣の防衛費に関する閣議決定の方針についてはこれを守ることとして、昭和六十年度予算編成に際しても、GNP比一パーセント枠を堅持したところである。
  (2) 我が国の防衛力の整備は、平和憲法の下、専守防衛に徹し、軍事大国とならない等の基本的方針にのつとつたものであり、近隣諸国に脅威を与えるようなものではない。

11 現在、自衛隊の国連平和維持活動への派遣を検討していないことは、御指摘の委員会において、安倍外務大臣が述べたとおりである。

五について

1 我が国は、内外の経済情勢と世界経済に占める我が国の地位を踏まえ、自由貿易体制の維持・強化、調和ある対外経済関係の形成及び世界経済の活性化に積極的貢献を行うとの観点から、一連の市場開放等の措置を決定、実施してきたところである。市場開放問題については、今後とも、かかる観点に立ち、かつ、国内事情にも配慮しつつ、適切に対処してまいりたい。
 今次日米首脳会談においては、他の諸問題とともに今後の日米経済関係につき、前述の考えを踏まえつつ、中・長期的視野に立つて大所高所から意見交換を行つたところである。
2及び3 政府としては、「報告」中の個々の具体的提言については実行の可否を含め、研究、検討しているところである。
4 昭和五十九年四月の日米農産物交渉において、牛肉、かんきつ類については、昭和五十九年度から六十二年度の四年間にわたつて段階的に輸入割当数量を増加すること等で決着をみたところである。
 農産物の市場開放については、関係国との友好関係に留意しつつ、国内農産物の需給動向等を踏まえ、食料の安定供給の上で重要な役割を果たしている我が国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが基本的に重要である。牛肉、かんきつ類の輸入の自由化については、我が国の生産事情等からすれば応じ難い諸問題がある。かかる観点から、今後の日米協議等においては、我が国農業の実情及びこれまでの市場開放措置等を相手国側に十分説明し、その理解を得ながら適切に対処してまいりたい。
5 食料は、国民生活にとつて最も基礎的な物資であり、食料の安定供給と安全保障の確保は、国政の最重要課題の一つである。このため、農政の展開に当たつては、国会の「食糧自給力強化に関する決議」の趣旨を踏まえ、生産性の向上を図りつつ、国内で生産可能なものは極力国内生産で賄うことを基本として、総合的な食料自給力の維持強化を図ることとしている。