質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第六〇号

中標津空港におけるYS-11型機事故調査に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年六月二十五日

小笠原 貞子   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   中標津空港におけるYS-11型機事故調査に関する質問主意書

 中標津空港におけるYS-11型機の墜落事故の原因究明を徹底的にはかり、再発防止の教訓にすることは極めて重要である。そこで、この事故の原因について一層究明する立場から、以下質問する。

一 中標津YS-11型機事故の原因調査に、飛行記録装置(FDR)のデータが使用されているが、事故機に装備されていた型式のFDRの許容誤差はどのように定められているか説明されたい。
 また、本件事故機のFDRの各データの誤差についてどのように推定したのか明らかにされたい。特に、(イ)高度一〇〇〇フィート以下、(ロ)対気速度一〇〇ノット以下、(ハ)機首方位、(ニ)垂直加速度について、各々の誤差の範囲を示されたい。

二 コックピット・ボイス・レコーダー(CVR)に録音されていたエンジンの音について、左周回進入からのゴーアラウンド(着陸復行)の時には、周波数とともに音の強さ(音圧)も増大していた。しかし、墜落直前には「エンジン音の周波数は増大していた」と事故調査委員会の報告書で指摘されているが、音圧は増大していない。
 この原因について一九八五年二月二十二日、航空安全推進連絡会議の公開質問に対する回答で、事故調査委員会の主管調査官は「CVRの自動感度調整装置(ALC)が働いたため」と述べている。しかし、着陸復行の時には、音圧は上昇しているのに、なぜ、墜落直前だけ、「CVRのALCが働いたのか」具体的に説明願いたい。同時に、なぜ、墜落直前だけ音圧が上昇していないのか説明されたい。
 また、ALCの機能及び特性についても具体的に説明されたい。

三 中標津YS-11型機墜落事故の事故調査報告書の六四頁(7)の中で、右プロペラの二番ブレードのピッチ変更機構の破壊過程について

(1) 二番ブレードが雪に接触した時、ブレードはピッチ上げモーメントを受けた。その結果として以下の破壊が生じた。
(2) アイボルト・スリーブ・スタッドが抜けた。
(3) さらにピッチ角が深くなり、フェザー角を超えた時に、アイボルト・スリーブ・フランジがシリンダー底面に当たつたため、オペレーティング・リンクが引つ張り破断した。
(4) 更に、ブレードにピッチ上げ方向の力が加わつたため、オペレーティング・ピン頭部がハブセンターに強く当たり、オペレーティング・ピン取り付けボルト一〇本及びダウエル・ピンが剪断により破断した。と述べている。
 しかし、当該ブレードには、ピッチ上げの力が加わつた事を示す傷・変形がなく、むしろ逆にピッチ下げのモーメントが加わつた事を示す変形が見られる。
 また、アイボルト・スリーブ・フランジがシリンダー底面に当たるのは、ピッチ角約八八・二度であり、オペレーティング・ピンの頭部とハブセンターが接触するのは約八七・四度である。したがつて、報告書の破壊過程の(3)と(4)は順序が逆である。この点について検討の上、破壊過程を説明されたい。

四 当該事故調査委員会報告書一〇四頁の写真、二二、二三によれば、右プロペラ二番ブレードの「ブレード・リテイニング・ボルト」の「ロッキング・セグメント」を固定している二本のボルトの間に二カ所の三角形の傷が見られる(光つて見える部分)。これらの傷が生じた原因について、どのように推定したのか明らかにされたい。

五 CVRの周波数分析は、どこで、どのような型式の機材により行つたのか。また、その費用は誰が負担したのか明らかにされたい。

  右質問する。