質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第五九号

千歳川放水路問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年六月二十五日

小笠原 貞子   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   千歳川放水路問題に関する質問主意書

 千歳川放水路計画については、地元関係者や専門家の間からも、多くの反対意見や疑問が出されているにもかかわらず、地元住民の合意も得られていないまま、ルート決定を急ぎ、計画を強行しようとしている。
 千歳川放水路計画で、果たして石狩川水系の洪水を防ぐことができるかどうか、国が莫大な補助金を投下して造成してきた農地を破壊するのみならず、ウトナイ湖等への悪影響を含め新たな自然破壊を生ずる危険性など基本的な疑問が残されている。
 一九八一年水害の際、日本共産党北海道委員会は石狩川水系治水対策についての抜本的対策をすでに提言してきた。石狩川水系の洪水をなくすためには、石狩川本流での抜本的な対策を強化することが必要なのであつて、農地と自然を破壊し、しかも本流の水害対策にはなり得ず、千歳川流域での効果もあまり大きく期待できない千歳川放水路計画には反対である。以下、具体的に質問する。

一 計画決定について

(1) 計画決定に当たつては、何種類かの対案の中から、その実効性、経済性など比較検討して決定されるべきである。しかし、今回の千歳川放水路計画については、他の対案は示されていない。比較検討された対案があるのか、あればそれを具体的に示されたい。
(2) 計画が発表された当初、東ルート、中ルート、西ルートの三案が併記して提示された。その後、東ルートが有力として報道されているが、軟弱地盤にかかわる調査やルート決定にかかわる調査など、どのような調査を行い、どのような比較検討が実施されたか、具体的に示されたい。この計画にかかわる国費の委託調査報告書を公表する考えはないか。

二 千歳川放水路建設にともなう影響について

(1) ウトナイ湖に流入する美々川は、馬追山系からの地下水によつて涵養されている川であり、千歳川放水路は、この水源部分に作られ、その河床は標高マイナス二メートル近くまで掘り下げられる。このため、地下水は放水路に流出してしまい、美々川の水源は枯渇し、ウトナイ湖及び周辺の湿地にも大きな影響が生じる。地下水低下の範囲と影響はどのように見込まれるか、美々川の流量は三~五割減ずると思われるが、どの位と予測しているのか。また、どんな対策を取るのか。
(2) 千歳川放水路は、標高〇メートル以下に掘削されるため、周辺の浅い地下水は大きな影響を受けるとともに、低地には広く泥炭層が発達しており、不同沈下など生ずる危険性があるが、どのような対策を取るか。また、地下水低下の影響はどこまで拡がるのか、各ルートごとに示されたい。
(3) 千歳市駒里の丘陵地は低い丘陵であるが、太平洋側と日本海側の気候を分けている重要な役割を持つた丘陵である。この丘陵に幅三百メートルの放水路を開削すると、丘陵部であるため、放水路の法面をとると開口部では五百メートル近い幅にもなる。このため、太平洋側の冷たい霧の流入など農作物に影響を与えることになり、早来町でも同様の問題が生ずるが、霧のひろがる範囲と影響はどうなるのか、またどのような対策をとるのか。
(4) 放水路の河口部では、河床はマイナス三メートルまで掘り下げられ、当然に海水が流入することになる。これに対して河口部に堰が設けられることになるが、平常時にはほとんど水が流れないような状況になる。放水路の維持水量はどれだけの水量を予定し、どの河川から取水するのか。

三 建設にともなう諸問題

(1) 千歳市、早来町などの農地造成に当たつては、各種の国庫補助など莫大な公共投資が行われてきたものであるが、これらの造成された農地が放水路で奪われることになり、大変なムダ使いになるが、この計画により失われる耕地面積はどれだけになるか。
(2) 千歳市根志骨地域の国営土地改良事業計画が立てられているが、放水路計画により放水路分の用地が減少し、国営事業としての基準以下となり、国営事業として実施できなくなるが、どのような対策をとるのか。
(3) 苫小牧東部工業基地内の都市計画道路の場合、道路は未建設であり、放水路ができた後に道路建設が行われる場合には、架橋費は地方自治体が費用負担せざるを得なくなる。この点、地方財政をいちじるしく圧迫するものであるが、国としてどのような対応を考えているのか。
(4) 駒里地域では、丘陵部であり、開口部は幅五百メートル近くにもなり、農地や集落が完全に分断されることになる。この場合、農道など生活用道路の架橋などはどのように行うのか、またその費用負担はどうするのか。
(5) 放水路により農家が農地の一部を奪われることにより、残地だけで農業経営の継続に困難が生ずる危険性がある。どんな対策を考えているのか。
(6) 放水路開削による廃土は、約一億立方メートルと見積られているが、この廃土の処分地、処分方法はどのように考えているのか。

四 放水路計画の効果について

(1) 千歳川放水路計画縦断図によれば、石狩川の合流点から三十二キロ地点までの右岸および左岸の地盤高は、いずれも計画高水位より低いことが示されている。地盤高が計画高水位より低いため、洪水時には支川河川や内水は千歳川放水路に流入することはできない。千歳川流域の低地帯では、放水路ができても支川や内水は機場排水しなければならないと思うが、どのような計画になつているか。また、先の縦断図は現時点でも有効性をもつているのか。
(2) この放水路計画に要する期間は二十年、費用は二千億円とも伝えられているが、現時点ではどう見積られているか。
(3) 従来、洪水時には石狩川本流から千歳川に逆流していたのに対し、放水路ができると千歳川との合流点に水門が設けられ、千歳川への逆流はなくなる一方、逆流していた分だけ石狩川本流の流量は逆に増加することになる。このため、本流の水害の危険性は増大することになる。この点、千歳川放水路を作つても石狩川本流の対策は別途行わなければならない。
 限られた予算内で治水事業が行われる以上、千歳川放水路計画により、石狩川本流の治水事業は縮少せざるを得なくなり、本流の治水対策はそれだけ遅延することになると思われるが、本流の治水事業計画はどのように進められるのか。

  右質問する。