第102回国会(常会)
質問第四四号
日本内航海運組合総連合会による船腹調整事業に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。 昭和六十年六月十七日 田代 富士男
日本内航海運組合総連合会による船腹調整事業に関する質問主意書 日本内航海運組合総連合会(以下、「総連合会」という。)は、内航海運業法及び内航海運組合法に基づき、内航海運業の保有船腹調整事業を実施しているが、最近、違反プッシャーバージが多数出現する等その実効性に疑問が出されている。
一 運輸省担当課長の立ち合いのもとに五十五年に締結された砂利船等の正常化に関する協定(以下、「協定」という。)では、営業転用船については、保有船腹調整規程の運用にあたつて引当資格を有しない船舶とされ、いわゆる「一身限り」の船舶として取り扱うこととされているが、引当資格を有しない船舶とした経緯と理由を明らかにされたい。
二 前記質問主意書において、「自家用船の営業転用後の代替建造引当権について、既存の営業砂利船と格差を設けることは公平の原則に反する。運輸省は、転用船一重量トンに付き代替建造引当権一重量トンを認めるよう総連合会を指導すべきではないか。」と質問したのに対し、政府は、「転用砂利船については、代替建造が認められるよう総連合会を指導している。」と答弁している。
三 協定において、営業転用船に引当資格を認めないこととしたのは、協定締結時における自家用船と営業船との間のバランスをとるための措置であると説明されているが、その後の経緯をみると、営業船には合理化を理由に二・七五倍の代替建造が認められ、一方、営業転用船は引当資格が認められないため、担保価値が低下し、代替建造が極めて困難となるという事態が発生している。
四 協定によつて、営業転用船に引当資格が認められないことは、六十二年九月末までに内航海運業法による営業許可基準に適合する船腹量を保有する必要性に迫られている営業転用船船主にとつては、死活問題である。
五 協定が締結された五十五年当時から今日までの間に、砂利船業界をめぐる環境は大きく変貌している。
六 現在総連合会が実施している船腹調整事業は、内航海運業法による適正船腹量の告示の船種区分に従つて行われており、砂利船は、一般貨物船の区分の中に一括されているため、引当資格の制限等の必要性が生じているが、一般貨物船から分離させて、砂利船だけの船種区分を設けて適正船腹量を算出し、それに対応する独自の船腹調整事業を実施すべきではないか。
七 砂利船等の一元化後の総連合会による船腹調整事業の実施状況をみると、前述のごとく営業転用船側に不当な差別を招く結果となつている。たとえ保有船腹調整規程が内航海運組合法第十二条に違反していなくても、このような結果を招いていること自体、法の趣旨に違反した運用が行われていることを明白に示している。
八 営業転用船について引当資格が制限されている結果、スクラップ価格(引当権益)が不当に高騰し、そのために新造船の建造価格を不当に高くさせているが、公正取引委員会は、このような現象をどのように判断しているか。
九 船腹調整規程に違反するプッシャーバージが横行しており、総連合会は五十九年九月に最終処理方針を決定し、ようやく対策に乗り出したが、今日なお十分な効果をあげていない。このような違反プッシャーバージに対して有効な取締りを実施せず、長期にわたつて放任してきたのは行政の怠慢ではないか。
十 総連合会は、違反プッシャーバージの処理にあたつて、一身限りとされている営業転用船による引当てを認めているが、その理由は何か。
十一 内航海運組合法に基づく船腹調整事業については、運輸省が、「内航海運長期ビジョン」の中で「環境の変化にもかかわらず、長期間にわたつて行われると、船舶の老朽化や適正な船型の建造に際して弊害がでてくる。」と述べて、事業の見直しの必要性を認めており、また、複雑窮まりない船腹調整規程についても「簡素化に努めるべきである。」と述べて、国民がよく理解できるように改善する必要性を指摘しているが、保有船腹調整事業の今後の見直しの方向とスケジュールを明らかにされたい。 右質問する。 |