質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第三七号

大韓航空機事件の真相究明に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年五月十四日

田 英夫   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   大韓航空機事件の真相究明に関する質問主意書

 昭和五十八年九月一日、大韓航空〇〇七便がソ連領空において撃墜された事件について、本院は同年九月十三日、全会一致で政府に対し、「あらゆる方途により、事件の真相究明に努め、大韓航空機が領空侵犯するに至つた原因を含めて可及的速やかに全容を明らかにすること。」を求める決議をおこなつたが、政府は今日まで、本院に対し、一片の調査報告もしていない。日本人乗客二十八名の遺族をはじめ、国民各層から、事件の真相究明を要求する声が高まつているので、次の疑問点について質問しておきたい。

一 政府は、本院が全会一致で決議した前記真相究明要求決議に対し、いつ、いかなる形で調査報告をおこなう方針であるか、次の諸点を明らかにしたうえで、お答えいただきたい。

(1) 政府が調査活動を委嘱している航空専門家等の職・氏名。
(2) 政府が今日までに実施した調査活動の概要。
(3) 政府機関(自衛隊を含む)が、今日までにおこなつた事故調査報告の概要。

二 防衛庁が公表した「昭和五十八年九月一日大韓航空機を要撃したソ連機の交信記録」(以下「ソ連機の交信記録」という。)の各通信の時刻はでたらめではないのか。
 仮に、でたらめではないとすると、なぜ、その内容が、防衛庁が公表した「自衛隊のレーダーデータによる大韓航空機の高度及び速度等」の内容および運輸省が公表した「東京国際対空通信局とKE〇〇七便との間の交信」の内容と、著しい矛盾を示しているのか、次の諸点を明らかにしたうえで、お答えいただきたい。

(1) 「ソ連機の交信記録」の録音テープに、時刻を客観的に記録する目的で通常は同時収録する標準電波を収録しなかつた理由。
(2) 高度約二万九千フィート(約八八三九メートル)で飛行中の大韓航空〇〇七便に関し、午前三時二一分四〇秒にソ連機が「目標は(高度)一万(m)で飛行している」と約千二百メートルも違つた報告をしている理由。
(3) 午前三時二六分二一秒に「目標は撃墜された」、同三時二六分二七秒に「攻撃から離脱する」とソ連機が地上基地に報告しているにもかかわらず、その後、大韓航空〇〇七便は同三時二七分に「東京、大韓航空〇〇七です」との全く正常な通信をおこない、同三時二七分二五秒まで、最後が「ワン・ツー・ワン・ツー・デルタ」と解析される通信をおこなうことができた理由。

三 「ソ連機の交信記録」のうち午前三時一三分二六秒の通信を「目標はIFFに対し応答しない」と政府は公表しているが、右の通信は「目標は(国際緊急周波数=一二一・五メガヘルツによる)よびかけに対し応答しない」と解釈するべきではないか、次の諸点を明らかにしたうえでお答えいただきたい。

(1) ザプロース(公的質問)というロシア語に、ザプロースチック(質問する機械)又はシステマパズナバーニャ・スボイ・チュジョイ(敵味方識別装置)の意味があるか。
(2) 要撃したソ連機に敵味方識別装置が搭載されていると解釈した理由。
(3) 敵味方識別装置がカムチャッカ半島における最初のソ連領空侵犯後、午前三時一三分二六秒に至る間、一時間半以上の要撃活動の後に、なお大韓航空〇〇七便に対し使用されたと解釈した理由。
(4) 政府機関(自衛隊を含む)が事件当日午前二時から同三時半に至る間、国際緊急周波数一二一・五メガヘルツの通信を受信又は発信した事実の有無およびその内容。なお、一二一・五メガヘルツの通信には秘密通信が禁じられているのであるからその全容を明らかにされたい。

  右質問する。