質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第三三号

五九中業と「GNP一%枠」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年四月十六日

上田 耕一郎   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   五九中業と「GNP一%枠」に関する質問主意書

 防衛庁は、「『大綱』達成を期す」として五九中業を策定中である。しかし、五九中業期間中の軍事費総額は、莫大なものとなり、「GNP一%枠」との矛盾が出てくることは必至である。
 そこで、五九中業と「GNP一%枠」に関して、以下質問する。

一 これまで政府は、五九中業と「GNP一%枠」について、「五九中業については、現在、防衛庁において作成作業中であり、見通しを述べる段階にない。」(一九八五年一月十八日付内閣参質一〇二第九号)とのべていた。
 さらに中曽根総理は、軍事費「GNP一%枠」について「今日まで対GNP一%を超えないことをめどとするとの三木内閣の閣議決定の方針を守つてきました。今後とも、その方針を守りたい。」(本年二月四日衆議院予算委員会)と答弁している。
 ところが、四月十四日のNHK報道によると、防衛庁は、五九中業期間中の「GNP一%枠」は約十七兆七千億円、と試算できるにもかかわらず、五九中業期間の軍事費は、それを上回る約十九兆円とし、五九中業の初年度である六十一年度からGNP一%を超えることを見込んでいる、ということである。
 この報道で述べられていることは、事実かどうか。

二 もし、この報道のとおりであるとするならば、防衛庁は、五九中業策定によつて、公然と「GNP一%枠」をはみだした軍備増強計画を打ち出すことになる。
 防衛庁は、五九中業策定の際、「GNP一%枠」にとらわれずに作業を行つているのかどうか。

三 五九中業が防衛庁の内部資料であるとしても、一九七六年の閣議決定や中曽根総理の答弁がある以上、たとえ防衛庁の試算であつたにしても「GNP一%」を上回る中業を策定するなどということは、国会や国民を欺くもので絶対に認められない事ではないか。

四 森繁弘・防衛庁航空幕僚長は、本年三月十五日の記者会見で「航空自衛隊への空中給油機導入を、現在策定作業中の五九中期業務見積りに盛り込むため航空幕僚監部が防衛庁内局と折衝中であることを明らかにした。」(三月十六日付「朝日新聞」)ということである。
 こうした事実があるのかどうか。

五 この報道のとおりであるならば、自衛隊は空中給油機を強く求めていることになる。
 しかし、政府、防衛庁は、これまで戦闘機による一千カイリ洋上防空は、「大綱」で予想していないことを明らかにしている。
 このことは、洋上防空について「数百カイリというようなそんなに大きな数字にはならない。」(一九八一年五月十二日衆議院内閣委員会、塩田防衛局長)という答弁や、生田目航空幕僚長(当時)が記者会見で「防空の空域は沿岸から二百マイル」(一九八一年五月十六日付「朝日新聞」)とのべていることからも明白である。
 従つて、戦闘機による一千カイリ洋上防空は予想していないとの見解の変更はない、と理解してよいか。

六 空中給油機を導入するようなことになれば、自衛隊戦闘機の行動範囲は一千カイリシーレーンの洋上防空にまで拡大され、「大綱」の範囲を超えることのみならず、自衛隊の侵略的役割をいつそう強化するものとなる。
 政府は、五九中業に空中給油機の導入を明記したり、「導入・装備化を検討」または「研究する」などということを盛り込むようなことをしない、ということを国民に明言すべきではないか。

七 五九中業の内容に関して、一兆円商品と言われるパトリオット(地対空ミサイル)に加えて、AEGIS(新型艦対防空ミサイルシステム)艦、など新たに高価な装備の導入が伝えられるが、これは事実か。
 これに加えて、これまで導入されてきたF15戦闘機、P3C対潜哨戒機なども引き続き大量に盛り込まれようとしている。
 こうしたことは、「GNP一%枠」の突破と、新たな際限のない大軍拡のスタートを意味するものとなる。財政危機の今こそ五九中業の策定を中止し、大幅な軍事費の削減計画を作成する時ではないのか。

  右質問する。