質問主意書

第102回国会(常会)

質問主意書


質問第一五号

米国の戦略防衛構想(SDI)に対する日本政府の基本的認識に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十年一月八日

秦 豊   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   米国の戦略防衛構想(SDI)に対する日本政府の基本的認識に関する質問主意書

 本年一月二日、米国の戦略防衛構想(SDI)に対して、中曽根総理は基本的な理解を示したが、そのこと自体多くの問題を含んでいると考える。
 そこで以下数項目にわたり、政府側の基本的な認識をただしておきたい。

一 一九八三年十二月十五日の国連総会本会議において、「宇宙における軍備競争の防止決議」が百四十七カ国の賛成という圧倒的多数で採択され、わが国も賛成した事実を政府はよもや忘却した訳ではあるまい。この決議に賛意を表したわが国の総理が、まさにその宇宙軍拡競争の引きがねと目されるSDIに基本的な理解を示すとは、自家撞着も甚だしいと考えるが、政府の認識を明らかにされたい。

二 また、一九六七年十月十日、わが国が批准書を寄託した「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」に照らしても、中曽根総理が示した「基本的理解」自体が許されぬと考えるが、政府はどのように考えているのか。

三 政府は、SDI自体が「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」に反するものとは考えないのか。考えないとすれば、その理由、論拠は何か。

四 (1) 米国のSDIは、その一環として弾道ミサイル防衛体系(BMD)の開発配備を含んでいると、政府は認識しているのか。
  (2) また、一九八四年三月三日の衆議院予算委員会において、安倍外相は、「将来BMD計画に関しての軍事技術供与については、日本の憲法、基本的法制を守りつつ自主的に慎重に検討する」旨の答弁をしているが、政府は、BMD計画及びSDIを「平和を守る防衛的なもの」との認識を持つているのか。またその認識の根拠を伺いたい。

五 政府は、宇宙兵器技術の対米供与について、米国政府から正式に要請された場合は、どのように対応するのか。宇宙兵器技術の対米供与の可能性は、全くないのか。それとも検討する余地が残されていると考えているのか。

六 総理は、SDIが軍縮につながると認識されているようだが、宇宙空間を軍事利用するこの構想のどこがどのように、また何故、軍縮につながるとお考えか。

七 政府は、「SDIの節目、節目での協議を、米国側に求める」と考えているようだが、そのような協議が、果たして有効な歯止めとして機能すると考えているのか。むしろ、協議はしたが米国の計画をなんら変更も出来ないまま、既成事実化するのを傍観する結果に終わるのではないか。

八 SDIは、これまで米ソ双方を律して来たMAD(相互確証破壊)理論を突き崩し、核抑止力に対する徒らな不信を増幅するだけのきわめて危険な構想であるとする指摘に対しては、どのように考えるか。

九 SDIの実現に対して、NATO加盟各国が抱く不安はこの構想の現実化によつて、米国の優位が確立されれば、西欧圏の防衛に対する米国の関心と熱意が薄れるとみるためであるとされているが、これに対してはどう考えるか。

十 SDIの現実化は、ソ連側を決定的に追いつめる結果となり、かえつて危険な先制核攻撃を誘発しかねないとする指摘に対しては、どう考えるか。

  右質問する。