質問主意書

第101回国会(特別会)

答弁書


答弁書第二四号

内閣参質一〇一第二四号

  昭和五十九年五月二十五日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員秦豊君提出対潜哨戒飛行艇PS-1の飛行再開と事故原因調査に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員秦豊君提出対潜哨戒飛行艇PS-1の飛行再開と事故原因調査に関する質問に対する答弁書

一から三まで並びに六、十及び十三について

 昭和五十九年二月二十七日発生した海上自衛隊のPS-1型機(対潜飛行艇)の墜落事故は、通常の高度、速度の巡航状態で発生しており、低高度、低速時に生じた昭和五十八年四月の事故とは飛行状況が異なつている。事故原因については、海上自衛隊航空事故調査委員会において現在調査中である。
 また、海上自衛隊航空事故調査委員会によつて作成される航空事故調査報告書は、原則として事故発生後四箇月以内に防衛庁長官に提出されることとなつている。

四について

 事故後、海上自衛隊では、安全教育の一層の徹底を図るとともに、保有するPS-1型機(対潜飛行艇)及びUS-1型機(救難飛行艇)全機について飛行を停止し、幅広い検査等を実施し、さらに、水上における滑走試験及び試飛行を実施し、その結果機材上特段の不具合や問題点がなく飛行の安全を確認し得たので、訓練飛行を再開したものである。

五について

 昭和五十八年四月二十六日発生したPS-1型機(対潜飛行艇)の事故原因は、「機長が、飛行場から離隔するための旋回終了後、コンディション・レバーがMAX位置にないことに気付き、同レバーをMAX位置とさせ、次いでエンジン出力を最大とするようパワーレバーを操作した。その際、エンジン出力増に伴つて機首上げが生じたこと、さらに、機長が、レバーの操作及び計器のチエックに気をとられ無意識のうちに操縦輪を引いたか、あるいは、操縦系統が何らかの原因でたまたま故障したかのいずれかがこれに加わり、機首が一層上がり、失速状態となつて墜落したもの」と推定されている。

七について

 今回の事故は、前述のように巡航状態で発生したものと推定されており、巡航状態では、高揚力装置(BLC)の使用を必要としない。

八について

 一般に双発以上のプロペラ機では、プロペラの回転が同一方向であるのが通常の形態であり、このような航空機は、低速時において一定の方向に機体が若干偏向するという特性をもつている。
 PS-1型機(対潜飛行艇)は、プロペラが後方から見て四発とも右回転であり、かつ、極めて低速で着水するので、その際に左傾左旋がやや大きく現われる傾向を有している。この傾向を是正するため、開発時において自動安定装置の装備及びエンジン・ナセルへのフェンスの装着などの対策を実施しており、また、操縦教育及び訓練においてパイロットに周知徹底しているので、運用上問題はないと考えている。

九について

 昭和五十九年二月二十七日に発生したものを除き、これまでPS-1型機(対潜飛行艇)の「大事故」は、四件発生しているが、これら四件の事故については、機材の不具合によつて発生したと判明したものはない。
 なお、御指摘の一九七八年八月の事故とは、昭和五十三年七月三日に発生した「中事故」を指すと思われるが、当該事故は、三番エンジンが過熱し破損したために発生したものである。

十一について

 PS-1型機(対潜飛行艇)の昭和五十九年三月末現在の事故件数(大事故)は五件、また、同飛行艇の十万飛行時間当たりの事故率は六・〇であり、海上自衛隊保有の全航空機の同事故率は二・一である。

十二及び十四について

 PS-1型機(対潜飛行艇)が開発された当時、潜水艦探知の手段としては、当時の技術水準からみて、一般にソーナーの方がソノブイよりも探知距離、精度等の点において優れていた。そのため、ソーナーを海中につり下げて運用することが可能な対潜飛行艇が必要であると考え、昭和三十五年度から昭和四十四年度にかけて、ソーナーを主体とし、ソノブイを従として運用するPS-1型機(対潜飛行艇)の開発を行つた。この開発の最終段階において、性能に関する詳細な試験を行い、十分に部隊の使用に供し得るとの結論を得ている。
 その後、防衛庁は、潜水艦探知技術の進歩、特にソノブイの能力が著しく向上したという状況にかんがみ、昭和五十一年度から昭和五十五年度にかけて、PS-1型機(対潜飛行艇)の有効性に関する検討作業を行つた。その結果、PS-1型機(対潜飛行艇)のソーナー戦術の有効性はソノブイに比し相対的に減少してきていること、また、PS-1型機(対潜飛行艇)のソーナーの能力の大幅な改善も期待できないこと等から、昭和五十五年八月対潜飛行艇を今後整備しないことを決定した。

十五及び十六について

 現有のPS-1型機(対潜飛行艇)は、昭和六十四年頃まで運用可能と考えているが、その対潜能力は、ソーナーに係るものを除いてもP-2Jとほぼ同程度であるため、引き続き対潜機として運用していくこととしており、救難用への改造は考えていない。