質問主意書

第101回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質一〇一第一五号

  昭和五十九年五月十一日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員秦豊君提出わが国が独自に対応すべき「限定的且つ小規模侵略」の概念に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員秦豊君提出わが国が独自に対応すべき「限定的且つ小規模侵略」の概念に関する質問に対する答弁書

一について

 「防衛計画の大綱」における限定的かつ小規模な侵略とは、全面戦争や大規模な武力紛争に至らない規模の侵略すなわち限定的な侵略のうち、小規模なものを言う。
 限定的かつ小規模な侵略の規模、態様等を具体的に示すことは困難であるが、一般的には、事前に侵略の意図が察知されないよう、大掛かりな準備を行うことなしに奇襲的に実施され、かつ、短期間のうちに既成事実を作つてしまうことなどをねらいとしたものであると考えている。

二、五及び六について

 「防衛計画の大綱」においては、安定化のための努力が続けられている国際情勢及び我が国周辺の国際政治構造並びに国内諸情勢が、当分の間、大きく変化しないという前提に立てば、本格的な侵略の生起は強く抑止されるとの判断の下に、侵略の規模との関係においては、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得る防衛力を保有することを目標としている。
 極東ソ連軍は、長期にわたり質量両面において増強されてきているが、特定の国を挙げて、その国の我が国に対する侵攻能力を申し上げることは、無用の誤解を生ずるおそれがあるので、差し控えたい。

三及び四について

 昭和五十六年及び昭和五十七年の防衛白書で示されている各種の態様の我が国に対する武力攻撃の規模は、それらが複合する場合を含め、事態の様相により千差万別であり、一概に言えない。

七及び八について

 「防衛計画の大綱」は、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得る防衛力を保有することを目標としているが、現在の防衛力は、いまだ「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準に到達していない。