質問主意書

第101回国会(特別会)

質問主意書


質問第三六号

核巡航ミサイル「トマホーク」の配備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年七月十二日

秦 豊   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   核巡航ミサイル「トマホーク」の配備に関する質問主意書

 米国国防総省は、去る六月二十七日、米海軍の海上(海中)発射核巡航ミサイル「トマホーク」が数日前、米海軍の艦船(複数)に配備されたと発表したが、それらをめぐつて、以下質問する。

一 今第百一回国会における政府側答弁は、一貫して「トマホーク」の配備に肯定的なトーンを打ち出しているが、政府が、「トマホーク」の配備を肯定し、評価する最大の論拠は何か。
 また、「トマホーク」の配備によつて、政府は、わが国の安全保障上どのような役割りと効果を期待しているのか。

二 政府の基本的認識としては、北東アジアにおける米・ソ両国のINF戦力の現状は、依然としてソ連側優位と考えているのか。

三 核巡航ミサイル「トマホーク」の配備は、そのような不均衡を回復し、北東アジアにおける戦域核バランスの保持に結びつくと考えるか。

四 部分的に見れば「トマホーク」配備は、ソ連が配備しているSS20への対抗措置とする側面も認め得るのではないか。

五 安倍外務大臣は、去る七月四日の参議院外交・総合安全保障に関する調査特別委員会で、核付き巡航ミサイル「トマホーク」の配備は、日米安保体制の効果的運用の上からも、大きなメリットがあると答弁しているが、これはどのような意味なのか。より詳細なお考えを伺つておきたい。

六 「トマホーク」の配備によつて、いわゆる抑止力が増強される反面、ソ連側の新たな対応、例えばSS20の追加配備や、艦船用の新型長射程巡航ミサイルの搭載、バックファイア戦略爆撃機からの新型ALCMの運用等によつて、北東アジア全域にわたる核戦力配備のエスカレートを誘発することは自明であると思うが、政府の見解はどうか。

七 相互核軍拡とも言うべき右に記したようなケースを放置すれば、結果としてわが国の安全保障上の選択肢を限定し、米ソ対決等に伴うわが国有事の際、ソ連の攻撃を吸引して、国民と国土と産業を一挙に危殆におとし入れるとは考えないか。

八 米国のラロック氏をはじめ、多くの専門家は、「日本には既に各基地をはじめ、通信施設等多数の米国核戦力支援システムが置かれている。これらは有事の際は当然ソ連側による主要な核攻撃の目標となろう。また、日本は東京、大阪を中心にほとんどの機能がメガロポリスへの超密集状態にあるため、限定核攻撃でも決定的な被害を受ける可能性が大きい」ことを指摘しているが、こういう見解に対しては、どう考えるか。

九 昭和五十六年九月三日、園田外務大臣(当時)は、参議院安全保障特別委員会で、私の「北東アジアの戦域核問題」に関する質疑に対し、「アメリカの戦域核持ち込みは、それがニュージャージー、原潜、B52を問わず必ず事前協議の対象であり、拒否する」旨答弁されたが、この答弁の趣旨からすれば、政府が現在とつている「ニュージャージー寄港の際のみ確認」との方針は、政策上も整合しないのではないか。

十 政府は、在来ポラリス型原潜の日本寄港は認めておらず、(当時)グアムを基地とする当該原潜は、韓国南部の鎮海への寄港を繰り返して来た。しかし、ポラリス型原潜とトマホーク搭載原潜の差異は、ミサイルの射程と弾頭の起爆力だけであり、両者に対する措置が異なることは、説得性を持ち得ないと考えるがどうか。

十一 ソ連の側から見れば、「トマホーク搭載艦船」の日本への寄港は、一回毎の寄港が実質上の臨時配備であり、反復寄港は准恒久的配備と考えられるのではないか。
 その場合、「トマホークは核・非核両用」とか、「事前協議が提起されていない以上、核付きトマホーク、TLAM-Nは持ち込まれていない。」などのいわば国内向け修辞などとは全く無縁に、ソ連側は、純軍事的、純核戦略的判断に立つことは、否定出来ないと考えるがどうか。

  右質問する。