質問主意書

第101回国会(特別会)

質問主意書


質問第三三号

山林・緑化樹木の被害に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年六月二十一日

藤原 房雄   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   山林・緑化樹木の被害に関する質問主意書

 昭和五十八年末から本年の上期にわたり、日本列島は異常寒波と例年にない豪雪となり、異常気象とも言われる状況が続いた。そのため、農林漁業をはじめ多方面にわたり被害は甚大である。
 特に、緑化推進が叫ばれているなかで、山林・緑化樹木については例年にない被害状況である。
 そこで、山林・緑化樹木の枯損について、被害の現状と今後の対策等、次の諸点について、政府の見解を求めるものである。

一 東北地方をはじめ関東など広範な地域にわたり、杉の枝葉が赤色に変色する状況が目につくが、本年、特に杉が被害を受けたその原因の究明は重要である。
 赤松の被害が全国に及びつつあり、その対策もようやくたてられたところであるが、本年の杉の被害は、一時的な寒風害のみによるものなのかどうか、その原因の究明と被害の状況、被害額等について明らかにされたい。
 さらに、今後の対策、特に、被害林家に対する再造林への対応等についての施策を講ずべきと思うがどうか。

二 環境緑化事業として、安全で快適な都市環境を形成するための重要な役割をもつ公共緑化樹木についても、前記のごとく各地で枯損がみられる。
 昭和五十三年には、干ばつによる立ち枯れの被害が多くみられた。
 このように、環境緑化樹木の立ち枯れについては、気象条件が大きな影響をもつている。
 緑化推進については、乾燥、寒冷、塩害等きびしい環境下にも優れた耐性を有する緑化樹木を開発し、生産、流通を整備するなど、適地・適種の樹種を選定して良好な植栽を行うべきであり、そうでなければ、財政再建のもとにありながら、税金のムダ使いと言わねばならないということを、私は、数度にわたり提言し、指摘してきたところであるが、政府の見解はどうか。

三 本年の緑化樹木の被害は、異常寒波によるものと言われているが、公共緑化樹木の被害の実態と被害額、枯損の原因について、どのように把握しているのか。
 本年は緑化樹木の被害も大きく、既に、枯損樹木緑化復元対策を講ずる地方自治体もみられるが、政府としては、今後どのような対策を講じようとしているのか明らかにされたい。

四 (1) 今日、公共緑化樹木の役割は、ますます大きくなつてきている。それだけに、枯損被害を最少限にくいとめる研究、技術の開発に努力しなければならないと考えるがどうか。
  (2)ところで、樹木への寒さの影響は、最低気温と最低気温の月平均温度とが大きな要素と言われている。

 本年の最低気温が、枯損の目立つた仙台市ではマイナス八・一度であるが、東京でも昭和二十年にはこれに近い時があつた。また、最低気温の月平均温度についても同様である。
 最低気温が概ねマイナス八度以下に達すると、現在使用されている緑化樹木のうち、常緑広葉樹は一部の樹種を除いて枯渇すると言われている。
 東京都でも、条件のよいところでは良いとして、東京以南でも気温の低い所が多い。
 そこで、植栽については、中・長期的な気象観測の資料等をもとに、植物の特性と地域性を配慮して行うべきと思うがどうか。

五 緑化事業の推進は、広く国民の関心をよび、現在、国民的合意のもとに進められている。
 それ故、気象条件とは言え、本年の被害の甚大なことにかんがみ、これを教訓として、緑化事業においては適性樹種の選定をきびしくする一方、産地等を明確にするなど、より実効性のある公共緑化樹木の植栽を実施すべく、同事業の科学的・総合的な施策を講じなければならないと考えるがどうか。

  右質問する。