質問主意書

第101回国会(特別会)

質問主意書


質問第二二号

環太平洋合同演習(リムパック)に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年四月二十七日

上 田 耕 一 郎   


       参議院議長 木 村 睦 男 殿


   環太平洋合同演習(リムパック)に関する質問主意書

 一九八四年度環太平洋合同演習(リムパック)がはじまろうとしている。この演習は、回を重ねる毎に大規模となり、米国を中心とし、NATO、ANZUS、日米安保条約の三つの軍事同盟に所属する五カ国による演習であり、事実上の多角的軍事同盟化をめざすものとなつている。
 リムパックが、政府が従来から否定してきた集団的自衛権を前提とした共同演習であることはあまりにも明白であつて、一九八〇年以来の日本の参加は、憲法違反はもとより、多くの重大問題をはらんでいる。リムパックの実態を明らかにするため、以下質問したい。

一 リムパック’82について

 リムパックについて、防衛庁は、これまでの国会答弁で、「特定の国に対する、それに対抗するための共同防衛行動、あるいはある国が攻撃をされた場合に他の国が共同してこれの防衛に当たるというような集団的自衛権の行使を前提とした訓練ではございません。」(一九七九年十二月四日参議院予算委員会、防衛庁佐々参事官)とのべている。
 ところが、リムパック’82の際、米第三艦隊第七両用戦隊の広報官ジェサップ中佐は、「日本側はサンジエゴ出発以来、一時期を除いて空母『レンジャー』を護衛する任務についた。『Dデー』には強襲上陸作戦区域外に出てはいるが、空母群護衛という性格には変更はない。」(「世界週報」一九八二年六月一日付)と説明した。
 さらに、リムパック’82の最高調整官ローレンス中将は、記者にたいして、日本の艦艇が両用作戦(強襲上陸作戦)に参加したかどうかについて、「一般的意味でイエス」(「世界」一九八二年七月号)とのべ、海上自衛隊艦艇が両用作戦(強襲上陸作戦)に参加したことを認めた。
 後日、米側はこれらの発言を訂正する措置をとつたが、この訂正について、リムパック’82を取材した日本の記者は、「防衛庁が国内世論の反発を心配して米側に訂正を頼み込んだ結果」(「世界週報」一九八二年六月一日付)とか、「明らかにどこかの要請による口裏あわせと思われた。陰湿である。」(「世界」一九八二年七月号)と書いている。そこで、以下質問する。

(1) リムパック’82において、海上自衛隊艦艇は米艦艇護衛の訓練を行つたことはいつさいないか。
(2) 海上自衛隊は、両用作戦(強襲上陸作戦)の演習には、いつさいかかわりをもたなかつたのか。
(3) 海上自衛隊は、マスコミでも報道されている米軍の両用作戦(強襲上陸作戦)を支援する米空母への他国からの攻撃を阻止する訓練は、いつさい行わなかつたのか。
(4) この件に関して、米側に、発言訂正の依頼をしたことがあるか。
(5) 防衛庁は、リムパックについて、「戦術想定はあつても戦略想定はない。」旨国会で答弁している。しかし、報道によると、米軍筋の話として両用作戦(強襲上陸作戦)について、「単なる逆上陸による“奪還”というより、たとえばサハリンとか北朝鮮、あるいは中東地域への敵前上陸といつた侵攻的な色彩が強い。」(「週刊読売」一九八二年五月三十日)という。
 リムパック’82のハイライトともいうべき両用作戦(強襲上陸作戦)は、特定の国や地域を対象とした戦略想定をもち、きわめて攻撃的な内容をもつ演習であつたのではないのか。
(6) リムパック’82には、米戦略空軍のB52爆撃機が参加したという報道があるが事実か。
(7) リムパック’82参加の海上自衛隊は、B52との訓練を行つたことはあるか。
(8) 防衛庁が国会へ提出したリムパック’82の資料には、B52の所属する米戦略空軍の記載がなかつたのはなぜか。

二 リムパック’84について

(1) リムパック’84は、海上自衛隊のP3C対潜哨戒機の初参加、海上自衛隊護衛艦五隻による「護衛隊群」クラスの規模への拡大などにより、日本の海上自衛隊は米海軍に次ぐ演習の主柱となつてきた。
 政府が、「専守防衛」といいながら、憲法違反の集団的自衛権を前提とする五カ国の共同演習に参加するのはなぜか。その理由を明らかにしていただきたい。
(2) リムパック’84に参加する各国の艦艇、航空機、参加人員などの規模は、どのようなものか。また、リムパック’84の期間はいつからいつまでか。
(3) リムパック’84には、新しい訓練項目が加わるのか。もしあれば、新しい訓練項目を明らかにしてほしい。
(4) 海上自衛隊艦艇は、米空母など米艦艇護衛の訓練、あるいは、両用作戦(強襲上陸作戦)訓練への参加をリムパック’84を含めて今後いつさい行わないと明言できるか。
(5) リムパックで特定の仮想敵や特定の地域を想定した訓練は、いつさい行わないと明言できるか。

三 高速データ通信装置「リンク11」について

(1) リムパック’82で「リンク11」が使用されたが、「リンク11」は何の目的で使用されるのか。
(2) 「リンク11」は、リムパック参加の各国の艦艇、航空機などの位置、方向、スピード、種別など戦術戦闘情報を交換するとともに、これを通じて、リムパックの最高調整官である米第三艦隊司令官の参加艦艇、航空機に対する指揮の一元化がはかられるのではないか。

四 リムパック参加経費について

(1) リムパック’80、リムパック’82、リムパック’84の経費は、それぞれいくらか。人件費、燃料費、弾薬費、米軍の訓練施設使用料など、内訳別に明らかにしていただきたい。
(2) リムパック’82では、シースパロー、ターターなどのミサイルが使用されたが、報道によると、今回のリムパック’84は、対艦ミサイルハプーンの発射訓練も行われるという。リムパック’84では、どのような種類のミサイルを何発発射するのか。シースパロー、ターター、ハプーンの一発の価格はおおよそどのくらいか。

五 ハワイのカホオラベ島への艦砲射撃について

(1) リムパック’82で、海上自衛艦艇によるハワイのカホオラベ島への艦砲射撃は、ハワイ諸島住民の強い怒りを呼び起こしている。
 カホオラベ島には、先住民族の住居跡など五百四十四もの考古学的遺跡があるため、一九八一年には、島全体が国定遺跡の指定を受けている。
 そのような島に対して、リムパック’82で海上自衛隊は艦砲射撃を行つた。なぜこのような島に艦砲射撃を行うことを許可したのか。艦砲射撃許可に到るまでの経過を含めて明らかにしていただきたい。
(2) 「専守防衛」を建前とするにもかかわらず、海上自衛隊は、なぜ陸地に対する艦砲射撃訓練を行う必要があるのか。
(3) リムパック’84では、カホオラベ島への艦砲射撃訓練は行われないか。今後、同島に対する艦砲射撃訓練はいつさい行うべきではないと思うがどうか。
(4) リムパック’84で、カホオラベ島以外でも艦砲射撃はいつさい行われないと明言できるか。
(5) 従来、リムパックにこれまで参加した五カ国以外に、フランスなど新たに参加国が増えることは予想されないか。

六 米国、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの五カ国による環太平洋合同演習(リムパック)は、ソ連との戦闘を想定した集団的自衛権行使の演習以外のなにものでもない。
 このような演習は、日本のみならずハワイ諸島住民の強い反発を呼び起こし、反対運動が盛り上つている。環太平洋合同演習(リムパック)への自衛隊参加は、とりやめるべきであると思うがどうか。

  右質問する。