質問主意書

第101回国会(特別会)

質問主意書


質問第一二号

「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」の運用に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十九年四月十七日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」の運用に関する再質問主意書

 「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」の運用に関する質問主意書に対する答弁書(内閣参質一〇一第五号)をいただいたが、その内容が不親切かつ不十分であるので、以下再質問する。

一 本年二月七日に提出した前記質問主意書の一では、同質問主意書の前文で指摘した問題点に関する政府の認識を伺つているにもかかわらず、現行法解釈の結論だけを押しつける類の前出答弁書では、到底納得することができない。そこで、前記質問主意書の前文で指摘した問題点を次に整理して示すので、改めて政府の認識を明らかにされたい。
 アメリカ合衆国軍隊の施設たる嘉手納飛行場周辺では、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(以下、「法」という。)第四条の規定により、防衛施設庁長官が、WECPNL(加重等価感覚騒音基準、通称「うるささの指数」)の基準値八五以上の地域に対し、昭和五十三年十二月二十八日に第一次指定を、同基準値八〇以上の地域に対し五十六年七月十八日に第二次指定を、同基準値七五以上の地域に対し五十八年三月十日に第三次指定を、それぞれ行つたが、既指定地域には、WECPNLの基準値を下げることによる新たな指定が及ばないため、第一次指定地域に第一次指定後に建築された住宅には、その建築が第二次ないし第三次の指定前であつても、防音工事の助成措置が受けられないことになつている。
 この結果、第一次指定地域に第一次指定後第二次指定又は第三次指定までに建てた住宅の所有者と、第二次指定地域にその指定までに建てた住宅の所有者、あるいは、第三次指定地域にその指定までに建てた住宅の所有者との間に、防音工事の助成の面で差別ないし格差が存在していると思われるが、この差別ないし格差の存在を政府は認識されているのかどうか、承りたい。

二 前記一で指摘した差別ないし格差を政府は容認しているのかどうか。また、容認しているとすると、その裏づけとなる理論的根拠を示されたい。

三 WECPNLの基準値を段階的に下げた法第四条に基づく指定を行うことによる行政上の効果を、既指定地域に及ぼさなくても、その間に生じる差別ないし格差が、憲法の規定する平等原則に照らして許されるかどうかの法的検討を行つた上で、私に対する前出答弁書の見解となつたのかどうか、承りたい。

四 前出答弁書は、区域指定の後当該区域に新たに建設される住宅について、防音工事の助成措置がとられない理由を、単に現行法の解釈として、「当該住宅が区域指定の後障害を承知して建設されるものであるから」と説明する。
 しかし、第一次指定地域では、WECPNLの基準値八五以上と、第三次指定地域の同基準値七五以上より、一〇ポイントも騒音被害がひどく、環境基準を大幅に上回る中で日夜生活することを余儀なくされ、憲法上保障されている「幸福追求の権利」と「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」さえ侵されかねない嘉手納飛行場周辺の現状の中では、「区域指定の後障害を承知して建設されたものである。」として、防衛施設庁長官の指定告示の前後により防音工事の助成への途を遮断することは、周辺住民の受けている被害の大きさからして問題である。
 三で指摘した平等原則に照らした法的検討を政府部内で行つていなければ、その検討を行つて、その内容を明らかにするとともに、併せて、本項で指摘した問題点について、政府の見解を伺いたい。

五 法第四条に基づいて、防衛施設庁長官が、嘉手納飛行場周辺において、第一次から第三次にわたつて指定した区域ごとに、防音工事の助成が必要な戸数(世帯数)と既に工事が完了した戸数(世帯数)を明らかにされたい。
 また、現在までに防衛施設庁長官が法四条に基づいて指定した地域に存在する住宅の防音工事が完了するのは、嘉手納飛行場周辺においては、おおよそ何年後と計画しているのか、その内容を具体的に明らかにされたい。

六 (1) 本年二月二十四日の参議院予算委員会における質疑で、嘉手納飛行場周辺の北谷町及び嘉手納町における基地周辺の土地利用の実情を踏まえた、本問題に対する私の指摘に対し、塩田防衛施設庁長官は、「今御指摘のようなケース、いろいろあろうかと思いますけれども、現在の法律による対象者に対してなるべく早く(防音工事の助成を)実現さしてあげたいというのが現在の私どもの立場であります。」と答弁している。
 この長官答弁から推察すると、現在の法律による指定対象地域の住宅の防音工事の助成が進めば、指定告示後に建てられた住宅への防音工事助成の拡大は、今後の検討課題であり、政策課題であるとも受けとれるが、見解を伺いたい。
  (2) 前出答弁書は、「区域指定の告示又は同法の改正は考えていない。」とするが、これは、防音工事助成の進捗状況を踏まえた現時点における政府の判断と承つてよいか。
  (3) 前出一で述べたような差別ないし格差の存在を政府が認識するなら、行政の公平さの確保のうえからも、政府の責任で、一で指摘した差別ないし格差の解消を図る措置をとるべきであると思うが、前出答弁書の「政府としては、区域指定の告示又は同法の改正は考えていない。」(傍点は質問者)とは、議員立法等による改正措置等に、政府としては反対するものではないという趣旨に理解してよいかどうか、承りたい。

 以上、六項目にわたつて質問したが、前述したように第二次指定、第一次指定と、時を遡るほどWECPNLの基準値が高くなり、それ故、環境基準を大幅に上回る米軍基地の騒音被害の中で暮らさなければならない沖縄県民の間に、法の運用をめぐつて強い不満の声があがつている。このため嘉手納町議会では五十八年十月四日に、また、北谷町議会でも同年十二月二十日に、それぞれ決議を行い、関係省庁への要請を行つているところであるが、私の提出したこの再質問に対しても、関係省庁、とりわけ環境庁及び内閣法制局とも十分連絡をとつて、誠意ある答弁をいただきたい。

  右質問する。