質問主意書

第100回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一五号

長雨等の被害によるももの品質低下に対する救済対策をはじめとするもも生産振興対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十八年十一月十一日

下田 京子   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   長雨等の被害によるももの品質低下に対する救済対策をはじめとするもも生産振興対策に関する質問主意書

 福島県における昭和五十八年産のもも栽培は、六月から八月にかけて、気温、日照量ともに平年より不足し、かつ長雨による降水量も多い異常天候から、五十五年産以降、四年続きの作柄不況となつた。
 この異常天候のため、ももの肥大は抑えられ、小玉が多く、収穫期は昨年より三日から五日も早く始まり、果肉先熟型の様相を呈した。そして、市場では、灰星病の多発とともに軟果で荷傷みも多いため、販売価格は早生種を中心に、品種別にみるとキロ当たり砂子で百八十一円(前年産二百八十三円)、白鳳で二百三円(前年産二百二十二円)、大久保で二百二十三円(前年産二百七十七円)など、低価格となつた。
 全体として、福島県の昭和五十八年産ももの販売実績は九月末現在で、数量一万七千五百九十二トン(前年比一一八%)、販売金額三十七億千三百万円(前年比九七%)、キロ当たり販売単価二百十一円(前年比八二%)にとどまつている。
 このため、生産費流通経費を差し引いた農家の収益は、キロ当たり砂子でマイナス八十八円、白鳳でマイナス四十七円、大久保でマイナス九円などとなり、さらに再生産に必要な販売単価をも大きく下回る厳しい結果となつた。(以上、福島県経済農業協同組合連合会資料による。)
 福島県は、全国屈指の果実生産県であり、もも栽培は、福島市を中心とした県北地方に主産地形成がなされている。昭和五十六年には、栽培面積三千六百三十ヘクタールで、県内の主要果実の三二・一%を占め、生産量四万八千九百トンで、山梨県に次いで全国第二位の生産県であり、福島県の主要果樹として、今後とも積極的なもも生産の振興が求められている。
 以下、収穫期の長雨等によるももの品質低下と、それに伴う低価格に対する政府の救済対策をはじめ、ももの生産振興に関して質問する。

一 政府は、長雨等によるももの品質低下について、技術指導等でどのように対応してきたのか。

二 政府は、昭和五十五年に、果樹共済を果樹農家の経営実態に即応させて、保険収支の健全化と加入の推進などを図るとして、農業災害補償法の一部「改正」を行つた。
 しかし、昭和五十六年度以降、果樹共済の引受け率は全国的に低位にとどまり、福島県のももの引受け率をみても、昭和五十六年一三・五%、昭和五十七年一二・七%と年々減少し、昭和五十八年度の引受け率(見込み)では、一一・五%にまで落ち込んでいる。その結果、保険収支の悪化に一層拍車をかけている。
 果樹生産農家にとつて、果樹共済制度が魅力あるものとして加入の推進が図られるために、特に要望の強い樹園地ごとの引受けを実施し、国の掛金負担割合を高め、共済金の支払い機会をふやすなど、制度の充実改善を図るべきと考えるがどうか。

三 政府は、昭和五十六年度から、災害により収穫量が減少した場合、収入金額の減少に応じて共済金が支払われる災害収入共済方式を試験的に実施しているが、災害等による品質低下等に伴う不時の一定以上の収入減を補てんし、果樹農家の経営安定を図るため、果樹所得共済の早期制度化を行うべきと考えるがどうか。

四 福島県では、収入減を補てんするため、青果物価格補償制度を適用し、福島県青果物価格補償協会から、およそ二億千六百万円を補償交付金として、対象もも生産農家およそ八千戸に、一生産農家当たり二万七千円で交付された。しかし、県の独自事業のため補償交付金の準備金に対する生産者の負担割合は、五〇%と高く、実質一生産農家の補償額は、一万三千五百円にしか過ぎない。
 政府は、こうした県独自の青果物価格補償制度に対し、当面財政的な援助を実施し充実させるとともに、国の立場からもなま果実の価格補償制度を検討すべきと考えるがどうか。

五 福島県のもも主産地では、改植樹齢に達しているものが多く、改植にあたつては、とりわけいや地対策が重要な問題となつている。

(一) 政府は、もものいや地現象の原因究明及びその防止対策として、どのような施策を講じているか。
(二) 福島県では樹園地面積の制約で、いや地対策に有効な輪作が困難なため、土壌交換、深耕、暗きよ排水、堆きゆう肥多投による地力増強、線虫防除などを行つた上での植付けを実施している。
 このため、県単独事業として、落葉果樹低位生産園再開発事業等を仕組み、必至の対策を講じているが、財政的制約もあり、ほとんどが各農家個別の努力にまかされている。
 この際、政府として、今後のもも生産振興対策の重要な施策として、いや地対策のためのもも園再開発に対する助成を実施すべきと考えるがどうか。

六 米国側は、オレンジの輸入自由化・枠拡大について、温州ミカンの非出回り期のいわゆる季節自由化・大幅な枠拡大は果樹生産農家に打撃を与えないと主張しているが、すでに多くの果実が「過剰」傾向にあり、季節自由化・枠拡大によつて、収穫期のぶつかるももをはじめ、りんごなど果実の生産者価格低下に一層拍車をかけるものであり、生産農家の経営不安を増大させるものとして、断じて受け入れるべきでないと考えるがどうか。

  右質問する。