質問主意書

第100回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五号

大韓航空機撃墜事件と政府の危機管理・情報管理体制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十八年十月十三日

秦 豊   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   大韓航空機撃墜事件と政府の危機管理・情報管理体制に関する質問主意書

 大韓航空機事件によつて、わが国の電子情報能力への評価と認識が深まつている反面、問題点も浮き彫りにされている。よつて、次の点について質問する。

一 大韓機事件の第一報は、九月一日正午過ぎ稚内の陸上自衛隊傍受施設から防衛庁と内閣調査室にもたらされると同時に、同じ情報は三沢の米空軍情報部隊にも流されたのか。

二 九月二日、交信記録のテープ本体が稚内で米軍担当将校に手渡され、それがシュルツ米国務長官の記者会見やレーガン米大統領演説の枢要な基礎になつたと考えられるがどうか。

三 今回のように自衛隊の得た情報を米国側が国際連合等の第三者機関で公開する場合の日米間の手続きは、どのような経路とレベルで行われたのか。また、国内の手続きと了解は、どのように行われたのか。

四 今回の事件を政府が知つた時点における外務省と防衛庁の協議は、いつどのようなレベルによつて行われたのか。

五 防衛庁の得た情報は、迅速且つスムーズに外務省に流されたのか。

六 実際には、首相官邸サイド即ち内閣官房長官による情報管理が一元的に行われたのではないのか。また、この種事件の際には、今後とも、内閣官房長官が情報管理の中枢を占めるのか。

七 事件発生後、防衛庁の官房長やソ連担当参事官は、適切且つ十分に対応できたのか。

八 今回の事件に当たつては、情報の回路は日本側からの全くの一方通行ではなかつたのか。それとも米国側からも事件に関する何らかの情報の提供、または情報の交換はあつたのか。

九 日本側がある程度情報を開示したことによつて、ソ連側はわが国の情報収集能力を含めきわめて多くの示唆を得たのではないのか。事件後ソ連側は当然新たな対応をとりつつあると思われるが、今回の情報の一部公表によつて、わが国の対ソ・エリント、対ソ・コミント収集体制は多くの改変を余儀なくされ、当面わが国の情報収集能力やその効果の低下は免れないのではないのか。

十 今回の事件の第一報は、どのようなルートで、いつ誰から内閣総理大臣にもたらされたのか。シビリアンの最高位たる内閣総理大臣への情報の伝達に遅滞はなかつたのか。

十一 事件の全経過を通じ、昭和五十一年九月六日のミグ25事件当時と比較して、危機管理・情報管理体制は、格段に整備され、有事即応のシステムに不安と不備のない状態と言い得るのか。

十二 第二臨調は、内閣総理大臣の補佐、助言機能の充実を答申しているが、今回の事件等を一つの契機として、首相官邸に防衛庁から派遣される何らかのしかるべき担当官を置くことは考えないのか。

十三 第二臨調の第三次答申は、更に「官邸に内閣官房機構等を収容するとともに、最新の情報通信施設をはじめとする施設・設備の充実に努め、その機能の近代化を図る。」とうたつているが、今回の事件等を踏まえてこの答申の現実化及び必要性についてはどう考えるか。

  右質問する。