第98回国会(常会)
質問第一七号
近代建築物の保存に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。 昭和五十八年五月二十六日 市川 正一
近代建築物の保存に関する質問主意書 明治以降建設された近代建築物のうち、とくに優れたもの百棟あまりは、既に重要文化財に指定され保護されている。しかし、重要文化財に指定されていないもののなかにも、建築技術的にも歴史的にも優れており、保存が望まれているものが多く、また大正期以後のものは、年代的に新しいため重要文化財に指定されていないものも少なくない。
一 価値ある近代建築物は、国民共有の文化的遺産として、その保存を促進すべきであると考えるが、この問題にたいする政府の基本的見解と立場はどうか、明らかにされたい。 二 建築物の単体保存については、文化財保護法にもとづいて、重要文化財、国宝などで保護、保存の対象としている。しかし、重要文化財の基準には該当しないが、建築技術的、歴史的など、価値ある近代建築物については、その保存が望まれながらも放置され、取り壊わされているのが現状である。
三 市町村が定める伝統的建造物群保存地区については、文化財保護法にもとづいて、一定の補助が実施されているが不十分であるので、この内容を拡充する必要があると思うがどうか。 四 建築物の建て替えに際して、ファサード保存やワン・スパン保存によつて近代建築物の保存を考慮しても、建築基準法および消防法の制約から断念せざるを得ない事態も生まれているので、安全性の確保を前提にその運用に配慮する必要があるのではないか。 五 公共建築物のうち、近代建築物の優れたものについては、可能な限り保存するため、必要な体制をつくるべきではないか。 六 公共建築物を新設する場合、利用目的にそつた使いやすいものにするとともに、歴史に残るような優れた建築物にするため、管理者とともに専門家や実際にその建築物を利用する職員や利用者の代表などで構成される委員会等をつくり、十分な審議をもとに建設すべきであると思うがどうか。
七 価値ある建築物の保存について、民間において積極的な活動がすすめられているが、文化的遺産を守る立場から、政府としてもこれに積極的な援助を実施すべきであると思うが、見解はどうか。 右質問する。 |