質問主意書

第98回国会(常会)

質問主意書


質問第一二号

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本人妻里帰りと安否の確認に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十八年四月六日

中野 鉄造   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本人妻里帰りと安否の確認に関する質問主意書

 日本赤十字社と朝鮮民主主義人民共和国赤十字会との間で、昭和三十四年八月十三日締結された在日朝鮮人の帰還協定(カルカッタ協定)により、第一次船が出航して以来、今日まで二十余年が経過し、帰還協定およびその後の措置によつて、九万三千三百十名の在日朝鮮人の人々が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)へ帰還している。その中には、日本国籍を有する者が六千六百七十九名、そのうち、日本国籍保有の日本人妻は千八百三十一名にのぼる。日本赤十字社と朝鮮民主主義人民共和国赤十字会との間における在日朝鮮人の帰還に関する協定第六条第六項には、「朝鮮側は、帰還者が乗船した以後の輸送及び食事、宿泊費等一切の費用を負担し、医療上の服務を無償で提供する。また帰還者の帰還後の生活安定のため、その住宅、職業、就学等すべての条件を保障する。」と謳われている。ところが、二十数年後の今日の現状は、その大半が音信不通、消息不明で生死の別さえわからない現状である。ただの一人として里帰りが実現していないうえ、関係者の心痛は計り知れないものがある。そこで、以下の事項について見解を示されたい。

一 外務省は、昭和五十年四月より各関係家族から請願を受理し、日本赤十字社を通して北朝鮮赤十字会へ安否の照会をしている。しかし、その件数は、二百件程度に限られているといわれる。安否の確認および里帰りを希望する関係者が多数にのぼつていることから、限られた二百件程度のみではなく、対象者全員の便宜を図るよう政府に要望するが、この点について、政府の対応策を明らかにされたい。

二 北朝鮮の日本人妻と日本の家族間との手紙の往来も自由に行われていない。昭和五十三年十月十八日、衆議院逓信委員会において、当時の服部郵政大臣は、「(北朝鮮は)万国郵便協会か連盟に加盟しているようである。そういつた機関を通じて、ソ連、中華人民共和国経由の交換があるので、そういつた機関を通じて打つ手がないか検討してみたい。」と答弁しているが、その後どのように検討し善処したのか伺いたい。

三 北朝鮮帰還事業は、両国間に国交がない状況下で、「人道上」という理由で実現した経緯があり、安否調査、日本人妻里帰りについても、人道上の問題として扱うべきである。人道上緊急を要する日本人妻の安否の確認および里帰り等の問題解決のため、政府は今後どのように取り組もうとしているのか見解を承りたい。

  右質問する。