質問主意書

第97回国会(臨時会)

答弁書


第九十七回国会答弁書第三号

内閣参質九七第三号

  昭和五十八年一月二十一日

内閣総理大臣臨時代理             
国務大臣 齋藤 邦吉   


       参議院議長 徳永 正利 殿

参議院議員藤原房雄君提出カモシカによる被害の補填等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員藤原房雄君提出カモシカによる被害の補填等に関する質問に対する答弁書

一について

1及び2 文化財保護法第八十条第五項の規定は、史跡、名勝、天然記念物の現状変更等が不許可等とされた場合について当該不許可等により通常生ずべき損失を補償することとするものであり、御指摘のカモシカによる被害に同項を適用して損失を補償することについては、不許可等と被害との因果関係等種々困難な問題がある。また、文化財保護法の改正は考えていない。
 被害の補填問題については、被害防止対策の実施によつてカモシカによる被害を防止することが第一であり、このため防護冊の設置、ポリネットの装着、忌避剤の塗布等の被害防止事業に対する助成を行い、これらによつても被害が防止できない場合には、被害の状況等に応じて麻酔銃等の使用による個体数調整を認め、これに対しても助成を行う等可能な限りの配慮をしてきたところであり、今後とも、できる限りの努力を重ねてまいりたい。
 なお、カモシカ被害跡地が復旧造林を必要とする状況に至つた場合は、右の被害防止対策を講じた上で現行の造林補助制度を適切に運用し対処していくこととしている。
3及び4 岐阜県下の被害者代表により提出された文書については、カモシカによる食害に対する文化財保護法の損失補償規定の適用等については困難な問題があり、被害者代表に対してはその旨を説明しているところである。
 なお、本件については、行政事件訴訟法にいう不作為の違法の問題は生じないものと考える。

二について

1 カモシカの保護地域については、既に下北半島地域、北上山地地域、北アルプス地域、南アルプス地域及び白山地域に設定を完了しており、今後、北奥羽山系地域、鈴鹿山系地域、紀伊山地地域、四国山地地域ほか数か所に設定を予定している。
2 今後設定を予定している保護地域については、範囲等について、現在、順次作業を進めているところであるが、保護地域内でのカモシカの保護及び被害防止対策については、関係者と十分協議して適切に対処してまいりたい。