質問主意書

第96回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質九六第一五号

  昭和五十七年六月十五日

内閣総理大臣臨時代理             
国務大臣 中曾根 康弘   


       参議院議長 徳永 正利 殿

参議院議員田代富士男君提出「予算の空白」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員田代富士男君提出「予算の空白」に関する質問に対する答弁書

一について

 財政法第三十条は、ある年度の予算が当該年度開始前に成立をみないという事態に伴う国政運営上の支障を回避するため、その予算が成立するまでの期間内に支出することを必要とする経費等についてその支出等を行い得るように、一定の期間に係る暫定予算の制度を定めたものである。
 このような暫定予算制度の趣旨から、暫定予算が「必要」となるのは、本予算が年度開始前までに成立することが期待できず、国政の円滑な運営に支障を生ずることとなる場合であり、したがつて、財政法第三十条の「必要に応じて」の判断は、そのような事情が見込まれるかどうかについて本予算を審議する国会の状況等を勘案して、内閣において行うものである。
 なお、暫定予算の編成に当たつては、暫定予算を必要とする期間、その期間中における支出又は債務の負担のため暫定予算に計上することを必要とする経費等を個別に検討して作成することとしている。

二について

 いわゆる予算の空白は、現行財政会計制度上は予定されておらず、好ましい事態ではないが、各般の事情から予算の空白が生ずる場合がないわけではなく、これまでにも遺憾ながら予算の空白が生じた事例があることも事実である。
 予算の空白を生じた期間中は、新年度の予算の執行は行い得ないが、この間の国政の円滑な運営に支障を生ずることのないよう、立替払等の方法により、新年度の予算の執行とならない形でやむを得ず必要最小限度の財務処理を行つている。このような方法により対処可能な限界については、支払等を必要とする経費等の状況により一概に言えるものではないが、新年度予算の執行が行い得ないという面からみると、このような処理が可能な期間はごく短い限られたもので、その間の経費の支払等も、このような処理が可能な最小限度のものであると考える。
 いずれにしても、政府としては、財政法の趣旨に沿い、予算の空白によつて国政の円滑な運営に支障を生ずることのないよう、国会の予算審議を尊重しつつ、適切に配意してまいりたい。

三から五までについて

 昭和五十三年度から昭和五十七年度までのいわゆる予算の空白期間中において支払等を必要とする経費については、それぞれ立替払、支払の延期等によつて対処しているが、科目別の対応措置及び予算成立後の事後処理については、次のとおりである。

(注) 予算成立年月日
昭和五十三年度 四月四日
昭和五十四年度 四月三日
昭和五十五年度 四月四日
昭和五十六年度 四月二日
昭和五十七年度 四月五日

(1) 被収容者作業賞与金等

 監獄法等に基づき支給される被収容者作業賞与金等については、第三者による立替え(矯正施設ごとの職員会の積立金)で対処した。

(注) 被収容者作業賞与金の立替払の状況(横浜刑務所外四十矯正施設の実績)
年   度    立替払された額(千円)  歳出予算で補てん処理した時期
昭和五十三           三四九   四月六日から十七日まで
昭和五十四            七九   四月六日から十一日まで
昭和五十五         一、二四六   四月七日から十六日まで
昭和五十六           二二一   四月六日から七日まで
昭和五十七           六五四   四月八日から十五日まで

(2) 供託金利子

 供託法に基づく供託金の利子の支払については、予算決算及び会計令により供託金(歳入歳出外現金)の繰替使用で対処した。

(注) 供託金利子の繰替使用の状況(東京法務局の実績)
年   度    繰替使用した額(千円)  歳出予算で補てん処理した時期
昭和五十三         三、三五一   七月二十一日
昭和五十四         九、六六八   七月六日
昭和五十五         九、九九六   九月六日
昭和五十六         二、七九六   七月二十八日
昭和五十七         四、五〇九  (未定)

(3) 郵便貯金の支払利子、簡易生命保険等の還付金等

 郵便貯金法に基づく支払利子、定額貯金割増金及び簡易生命保険法に基づく還付金等の支払については、予算決算及び会計令による郵政官署における現金の繰替使用で対処した。

(注) 郵便貯金特別会計、簡易生命保険及郵便年金特別会計に係る繰替使用の状況

(イ) 郵便貯金特別会計
年   度    繰替使用した額(千円)  歳出予算で補てんした時期
昭和五十三       四三六、七五七   五月三十一日
昭和五十四      二一一、四七四   〃
昭和五十五     六、四九四、三九八   〃
昭和五十六       三一五、七二三   五月三十日
昭和五十七       九四七、一六九   五月三十一日

(ロ) 簡易生命保険及郵便年金特別会計
年   度    繰替使用した額(千円)  歳出予算で補てんした時期
昭和五十三     五、三四三、六七九   四月二十八日
昭和五十四     三、二一四、三二七   〃
昭和五十五    一〇、六六七、七七三   四月三十日
昭和五十六     四、五九三、九九四   〃
昭和五十七    一三、七八四、一八三   〃

(4) 失業給付金等

 雇用保険法等に基づき四週間に一回ごと指定された日に支給されることとなつており、前年度歳出予算の残を使用して支払い、予算成立後に年度更正、科目更正を行つて対処した。

(注) 労働保険特別会計雇用勘定における失業給付金の年度別の対応措置状況

年   度  空白期間中に支払つた額(千円) 年度更正の処理を行つた時期
昭和五十三       二、三五八、〇四六  四月五日から四月七日まで
昭和五十四         三九七、八一〇  四月四日から四月六日まで
昭和五十五       八、二〇五、六〇四  四月五日から四月八日まで
昭和五十六       四、五四九、二七九  四月三日から四月六日まで
昭和五十七      一一、四九〇、二七八  四月六日から四月十日まで

(5) 生活保護費

 受給者への支払及び支払日の決定は、各都道府県等が行てつおり、毎月五日が大半を占めている。支払日から補助金交付決定の日までの間の国庫負担分については、予算成立後速やかに交付決定することとしている。

(6) 証人及び参考人等の旅費

 刑事訴訟費用等に関する法律等に基づいて出頭する証人等の旅費については、予算成立後精算払した。

(7) 国選弁護人報酬

 刑事訴訟費用等に関する法律に基づく弁護人に支給する費用は、予算成立後に後払した。

(8) 資金運用部預託金利子

 資金運用部資金法に基づく利子の支払については、予算成立後に後払した。

(9) 立法事務費

 国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する規程により毎月一日に交付されることになつているが、両院議長決裁により、予算成立の日の翌日まで交付期日を延期した。

(10) 国会職員の給与費

 国会職員の給与等に関する規程により毎月五日に支給されることになつているが、両院の事務総長及び国立国会図書館長の決裁により、予算成立の日の翌日まで支給日を延期した。

(11) 参議院速記生徒手当

 国会職員の給料等の支給期日の延期の取扱いに準じて対処した。

(12) 食糧費(刑務所等被収容者、国立更生援護機関入所者、国立病院患者等)

 前年度からの持越食糧により対処した。

(13) 医薬品等購入費(国立学校、国立病院等)

 前年度からの持越医薬品等により対処した。

(14) 年金給付のうち脱退手当金、死亡一時金等

 厚生年金保険法、国民年金法等に基づき支払われるいわゆる随時払分については、予算の空白期間中に裁定されたものがない。
 なお、恩給等(国会議員互助年金、文官等恩給費、遺族等年金等)については、年金恩給支給規則等により払渡開始日は四月六日となつており、また、地方交付税交付金(四月分の普通交付税)については、地方交付税法の規定により四月中に交付することとなつており、それぞれ予算の空白期間中の支出はなかつた。