質問主意書

第96回国会(常会)

質問主意書


質問第二七号

沖縄の米軍基地をめぐる疑惑に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十七年七月七日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   沖縄の米軍基地をめぐる疑惑に関する質問主意書

 一九七二年復帰から十年、今なお軍事基地の重圧から沖縄は解放されていない。復帰当時、政府によつて「核抜き本土並み」と喧伝された基地の態様は、整理縮小はおろか機能面ではむしろ拡充強化されている。返還交渉最大の課題であつた「核抜き本土並み」について、最近、米元国務次官で駐日大使もつとめた、ユーラル・アレクシス・ジョンソン氏が沖縄のジャーナリストのインタビューに答えて、「米国は日米安保条約に基づいていつでも核兵器の沖縄への持ち込みを提起する権利を留保している。」と言明、また「本土並み」については「沖縄基地を本土並みに縮小するという意味でなく、本土の基地と同じく安保条約の諸取り決めの適用を受けるということである。」と語つている。更に、「核抜き」については、ライシャワー元駐日大使も「米国の艦船が核兵器を積載したまま沖縄に寄港し、通過していることは考えられる。米国が事前協議制に基づいて核の持ち込み(イントロダクション)を正当な理由を挙げて提起すれば、日本政府がノーと言うとは思えない。」と語つている。また、このほど沖縄県国頭村にある米軍演習場「北部訓練場」をめぐつて、復帰の際、日米合同委員会で在日米軍基地の使用条件などを取り決めた、いわゆる「五・一五合意メモ」の公表された部分と米海兵隊内部の訓練規則との間に“相違点”があることが沖縄県議会で問題となつた。公表されている「五・一五合意メモ」によると「北部訓練場」は上空二千フィート(約六百メートル)まで米軍による使用が認められているが、海兵隊の「射場及び訓練区域規則」では航空機による模擬的な近接航空支援訓練の場合、最高九千フィート(約二千七百四十五メートル)まで使用されることになつているという。
 これについて、米海兵隊報道部は「未公表部分を含む五・一五合意メモと海兵隊の訓練規則に食い違いはない。」と言明、また那覇防衛施設局の千秋局長は「二千フィートまでを提供しており、それ以上の高度については一般の飛行機と同様に嘉手納ラプコンの管制を受けている。」と説明している。
 このように軍事基地をめぐる沖縄の実態は今なお幾多の疑惑につつまれている。
 そこで私は、以下の点に関し、あらためて政府の見解を承りたい。

一 「米国の艦船が核兵器を積載したまま沖縄に寄港し、通過していることは考えられる。」というライシャワー元駐日大使の発言について、政府はどのような見解を持つか。また、米国が事前協議制に基づいて沖縄基地に核の持ち込み(イントロダクション)を提起した場合、政府は拒否できるか、また拒否するか。

二 「本土並み」は「沖縄基地を本土並みに縮小するという意味ではなく、本土の基地と同じく安保条約の諸取り決めの適用を受けるという意味」のジョンソン元国務次官の発言に対し政府はどのような見解を持つか。

三 「北部訓練場」の空域に関する「五・一五合意メモ」の公表部分と米海兵隊の訓練規則との“相違点”は「五・一五合意メモ」の未公表部分で解消されるか。

四 「嘉手納ラプコン」の管制を受ければ自由に空域使用ができるのであれば「提供空域」を設定した意味がなくなり、空の安全性が危機にさらされることになるが、この点について、日米間に何らかの合意があるのかどうか。

五 右のような疑惑が生じるのも、「五・一五合意メモ」に未公表の部分があるためであり、沖縄県と県民は「五・一五合意メモ」の全文公表を要求している。この県民要求に対し政府はどう対応するか。なお、これまで、「五・一五合意メモ」の公表は「外交文書なので原則として公表できない。」とのことであるが、外交文書が公表できない根拠は何か。

六 復帰十年を経つた現在、米軍が今なお、進入管制を保持し続けているということ事態に問題がある。また、最近では世界でも七カ所しか設置していないというACMI(空中戦闘技量評価装置)の沖縄での新設計画もあると報じられている。このような、ACMIの設置計画の中止は勿論、進入管制の米軍からの返還を実現させ、名実ともに沖縄の空の安全確保に日本政府が責任を負うべきと考えるがこの点に関する政府の見解を承りたい。

  右質問する。