質問主意書

第96回国会(常会)

質問主意書


質問第一二号

イラン石油化学事業に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十七年四月七日

秦 豊   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   イラン石油化学事業に関する質問主意書

 イラン・イラク戦争は、ゆるやかに鎮静化の方向をたどりつつあるようだが、この時期に改めてイラン石油化学事業に関する政府の対応についてただしておきたい。

一 去る昭和五十四年十月、IJPC(イラン・ジャパン ペトロケミカル カンパニー)をナショナル・プロジェクトの対象として以来、実施された政府としての支援策の全容について具体的に述べていただきたい。

二 通常この種の政策決定を行う場合は、事務レベルの積み上げ方式をとつているが、何故IJPCに限つて唐突な閣議決定(昭和五十四年十月十二日)によつたのか。

三 当時、外務省、大蔵省、経済企画庁、通商産業省など関係省庁間の意見は深刻に対立しており、殊に経済企画庁と大蔵省サイドからは、採算性のあいまいさや原料供給の不安などをあげて強い反論が展開されていた。それらを無視し、あえてそれらを超えた閣議の判断とは一体何をめざし、何を根拠としたものか、正確に答えていただきたい。

四 その時点での大平内閣は、実質上の暫定内閣であり、総選挙後の第八十九回特別国会の召集(昭和五十四年十月三十日)を控えていた。そのような過渡期ともいえる環境にあつて、何故あわただしくナショナル・プロジェクト化を決定しなければならなかつたのか。

五 IJPCプロジェクトの採算性について、政府はどのような検証をしたのか。また、確信を持つているのか。

六 原料となる石油随伴ガス等の価格は、把握しているのか。あるいは、今後どのようにして煮つめるのか。

七 政府がナショナル・プロジェクトへの参入を決定するには、一定の基準、原則を有しているのか。

八 有していないとすれば、IJPCの場合には何をその際の基準としたのか。それともこれは、厳密性と客観性を欠いた政治判断ではなかつたのか。

九 政府は、今後ともIJPCに対する支援措置を継続する方針か。

十 IJPCの全施設の完成率およそ八十五パーセントの段階で、六回にわたる爆撃を受けているが、その中には最重要の反応塔なども含まれており、精査をすればその損害額は膨大な額に達するのではないか。まず損害額の把握をどのような時期と方法で行うのか。

十一 損害状況を一応別として、被爆前の状態(八十五パーセント完了)から完成をめざす場合の必要資金は、どれ程に見込まれているのか。また、そのうち政府資金はどれ程か。

十二 昨年以来の円借款等の対日返済の内容はどうなつているのか。元本自体の返済についての両国間のとりきめはいかがか。

十三 今年度の返済計画はどうなつているか。また、政府としては、今後のイラン側の返済能力について不安は有していないのか。

十四 今後のイラン側との交渉の焦点と予定について伺いたい。

  右質問する。