質問主意書

第96回国会(常会)

質問主意書


質問第三号

極東有事研究と我が国の防衛力整備等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十七年一月十四日

黒柳 明   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   極東有事研究と我が国の防衛力整備等に関する質問主意書

 三年二カ月ぶりで日米安保協議委員会が開かれた。その席上、極東有事研究、防衛協力、共同訓練等が日米双方で合意され、日米軍事同盟化が一段と鮮明になる可能性が生じ、今日の自由民主党の軍拡ムードでは、憲法や日米安保条約を拡大解釈するおそれがあるので、次の点を質問する。

一 極東有事の事態を想定した日米共同研究を開始することが決定され、米側の要求は、昨年十一月の米第五空軍司令官ドネリー空軍中将が記者会見で明らかにした朝鮮戦争時の先例にならつた「便宜供与」を期待しており、このことは「個別的自衛権」の範囲を超える可能性があり、憲法に抵触する危険性がある便宜供与を認めることになるのかどうか。

二 便宜供与を認めれば、立法手続、行政上の措置を行わなくてはならない。この点はどのようになるのか。

三 他国での軍事紛争に自動的にコミットすることは、憲法で禁じられている集団的自衛権の発動になる。「現行法制、従来の条約解釈の範囲内でできることしかやらない」との考えがあるようだが、その範囲内で何ができるのか、歯止めはあるのか。

四 鈴木総理は、一月十二日の閣議後、伊藤防衛庁長官に防衛力の整備に関して陸、海、空のバランスについて、日本独自の方針を考えるように指示したといわれるが、このことは先の日米安保協議委員会で米側からの防衛力増強要請を受け入れ、我が国の防衛力整備に、今後、海、空を重視した整備を行えという姿勢を示したことだと思われるが、昭和五十一年度防衛計画の大綱との関係はどうなるのか、防衛計画の大綱を変更する考えか。

五 防衛庁はすでにわが国の有事法制の研究を行つているが、日米安保協議委員会で「極東有事の研究」が合意されたが、極東有事と必ずしも、私権を制限される日本の有事とは関連はない。極東有事と我が国の有事との関係はどうなるか。

六 伊藤防衛庁長官は、昨年十二月二十一日の衆議院内閣委員会において「五六中業で防衛計画の大綱の水準を達成するためにはGNP一%を超える場合があり、昭和六十二年度大綱達成を優先させる方針」を明らかにした。また、防衛庁の試算でも昭和六十二年度にはGNP一・五%前後になるといわれ、鈴木内閣の防衛力整備の姿勢をみても一%を超えることは明らかである。昭和五十一年十一月の閣議で決定した「当面」一%以内をいつ変更するのか、「当面」とは現時点でどういう意味をもつか。あくまでも閣議決定の一%以内を堅持するのか。

七 日・米軍事技術協力問題について、政府は「包括提供は困難、個々の事例で判断する」をきめ、米国を武器輸出三原則の適用除外地域とすることも認めない方針を打ち出すようだが、個々の事例で判断するといつても非常に難しい問題があり、また、三原則をなしくずしにされるおそれがある。また、政府部内でも意見が統一されていない現状で武器輸出三原則を崩さず政府の統一見解を出せるかどうか、再開国会前に出せるのか。

八 米・中の軍事協力が急進展されており、既に新疆に通信、偵察基地が建設され、また、大連に米第七艦隊の寄港基地とする交渉が進められているといわれるが、米政府は、中国、日本を含めた極東への戦域核配備をする可能性を言及しているが、米第七艦隊の大連寄港に関して、我が国政府は、どのように受けとめているか、また、米極東戦略の変更があると思うか。

  右質問する。