質問主意書

第95回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七号

集団的自衛権の解釈に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十六年十月二十七日

秦 豊   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   集団的自衛権の解釈に関する質問主意書

 現在までの国会答弁等において、わが国が有する自衛権は、あくまで個別的自衛権であり、いやしくも集団的自衛権は、憲法の容認する自衛権の限界を超えるとの解釈が既に定着している。
 しかし、次の各項について、あえて政府の見解をただしておきたい。

一 現行憲法の制定をめぐつて開かれた第九十回帝国議会において、当時の外務省の萩原条約局長が憲法第九十八条の解釈について述べた文書があるといわれている。そのなかで、第九十八条第一項たる最高法規条項と、第二項の条約尊重条項との優先度に触れている。その論旨は「憲法前文の精神からして、日本は一国だけで独自の道は歩まず、国際協調の精神で進む。憲法が最高法規というのは、国内の問題であり、したがつて国際条約尊重は、当然これに優先する。」というものである。この解釈は、当時の政府としては、公式な統一見解ではなかつたのか、またこの萩原見解は集団的自衛権を肯定した論理ではないのか。

二 その後、政府によつて、この見解は修正ないしは変更または破棄されたのか。

三 修正ないし変更または破棄されたとすればどの時点でか。また何故なのか。

四 あるいは、今もなおこの見解を支持しているのか。

五 日本国との平和条約(昭和二十七年四月二十八日条約第五号)第三章第五条(C)においては、日本国が個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること、及び集団的安全保障取極を締結することを容認しているのではないのか。

六 以上の観点からして、わが国の有する自衛権を個別的なものに限局していることは、論理的に整合しないのではないのか。

七 解釈として「わが国も国際法的に認められている集団的自衛権を保有するが、国権の発動としてこれを行使はしない。」ということか。

八 国際法的かつ客観的に認められている集団的自衛権を、あくまで主観的かつ国内政治的裁量でその保有を否定することは、それ自体無理ではないのか。

九 政府は憲法解釈として「現行憲法では、集団的自衛権はわが国固有の権利を超えるもの」との見解を今後とも保持する方針か。

十 有事の際、シーレーンの防衛は、きわめて緊要な課題と思われるが、これをわが国単独で行うことはほとんど不可能に近い。日米共同で行うシーレーンの防衛は、個別的自衛権の単なる拡大とみるのか、あるいは集団的自衛権の行使と考えるのか。

  右質問する。