質問主意書

第95回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

戦後ソ連強制抑留者の処遇改善に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十六年十月二十日

渋谷 邦彦   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   戦後ソ連強制抑留者の処遇改善に関する質問主意書

 政府は、引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律(昭和四十二年法律第百十四号)の制定をもつて、戦後処理問題に一応の終止符を打つことを得たとの見解に立つているように見受けられる。しかし、その後における戦後ソ連強制抑留者の補償推進運動による国民的盛り上がりにみられるごとく、本問題は、今日なお解決をみていない法律的、政治的問題であるので、次の諸点について政府の明確な答弁を承りたい。

一 第二次世界大戦終結に際し、降伏をした日本軍将兵に対するソ連の長期抑留と強制労働は、ポツダム宣言及び国際法の原則に反したものであるとの、従来の政府の見解は間違いないか。

二 日本政府は、降伏に際して、マッカーサー連合軍最高司令官の権限及び命令が、ソ連軍の上に及ぶことの確認をしたうえで、対ソ降伏交渉を行つたのかどうか。

三 捕虜に対する人道的処遇の義務を抑留国に課し、送還後の捕虜の補償請求権を母国に属するものとした慣行は、第二次大戦前後にかけて、世界の文明諸国において定着し確立された制度であつて、わが国が、昭和二十八年に批准した千九百四十九年のジュネーヴ条約によつても確認されたものである。
 ソ連によるシベリア強制抑留者には、右の慣行が該当し、かつ、ジュネーヴ条約は、現憲法第九十八条第二項が適用されるべきものと解されるがどうか。

四 前項に指摘したごとく、ソ連強制抑留者の被害の原因と態様及びそれに対するわが国政府の補償否定の法的根拠については、疑義があり、これまでの政府答弁をもつてしては、問題が解消したとはいい難いものがある。
 したがつて、政府は、この疑義について所要の調査費を計上し、速やかに事情を解明のうえ、補償措置を講ずべきものと思われるがどうか。

  右質問する。