質問主意書

第94回国会(常会)

答弁書


答弁書第二〇号

内閣参質九四第二〇号

  昭和五十六年六月二十六日

内閣総理大臣 鈴木 善幸   


       参議院議長 徳永 正利 殿

参議院議員喜屋武眞榮君提出昭和五十五年度「農業の動向に関する年次報告」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員喜屋武眞榮君提出昭和五十五年度「農業の動向に関する年次報告」に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 農業基本法制定以降の農政の成果については、「昭和五十五年度農業の動向に関する年次報告」において詳述したところであるが、これを概括すると、米の供給過剰、農地価格の高騰等による土地利用型農業部門での経営規模拡大の停滞等の問題はあるものの、増大する食料需要に対応して農業生産の選択的拡大が進み、生産性を高めつつ、国民の基本食料の大部分を供給するとともに、農業従事者と他産業従事者との生活水準の均衡が達成されたと考えている。
 なお、生活水準の均衡は、農業の生産性の向上と農外就業機会の増大による兼業所得の増大により達成されたものであるが、農外就業機会の増大を図ることは、農業基本法においても予定されているところである。
(2) 経営規模拡大等による生産性の向上を図りつつ、需要の動向に応じた農業生産の再編成を図ることは、今後の農政の重要課題である。
このため、農用地利用増進法等を活用して農用地の利用権等の集積による中核農家の規模拡大等を推進するとともに、国内で生産可能な農産物は極力国内生産により賄うことを基本としつつ、品目ごとに食生活面及び農業生産面での重要度その他の諸条件を考慮して、需要の動向に見合つた生産の振興を図ることとし、農業生産基盤の整備、農業技術の向上及び普及、農業近代化施設の導入等各般の施策を推進しているところである。
(3) 農業基本法は、農業生産の選択的拡大、生産性の向上、農業構造の改善、流通の合理化、加工の増進、農産物の価格の安定等農産物の生産から消費に至るまでの各分野にわたつて農政の基本方向を明らかにしたものであるが、この農政の基本方向は、国民食糧その他の農産物の供給等国民経済の発展及び国民生活の安定のために果たすべき農業の使命を踏まえて、規定されたものである。
 政府としては、今後ともこのような同法の趣旨に沿い、食生活、農業生産等の動向を踏まえて、幅広く各般の施策の推進を図つていく方針であり、同法を改正する考えはない。

二について

 農産物価格政策については、昭和五十五年十月農政審議会から答申された「八十年代の農政の基本方向」において、今後とも価格変動防止をその最も基本的な機能として運用していくこと、需要の動向に応じた農業生産の再編成に資するため価格のもつ需給調整機能を重視した運用を行つていくこと、農業所得の確保については構造政策及び生産政策の積極的な推進による生産性の向上を図ることが基本的に重要であり、価格政策において農業所得の確保を図る場合には、中核農家に焦点を合わせていくことを長期的な目標としていくこと等の指摘がなされたところであり、関係施策との有機的な関連に配慮しつつ、農産物価格政策の適切な運用に努めてまいりたい。