質問主意書

第94回国会(常会)

質問主意書


質問第二一号

教科書問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十六年六月五日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   教科書問題に関する質問主意書

 昨今、マスコミ等を通じて、「教科書問題」に関する議論が活発化し、教科書問題に関心を持つ多くの国民の注目を集めている。
 今日の「教科書問題」は、教科書に対する一部政、財界からの不満、いわゆる「偏向教科書」との批判があり、つまり「愛国心や国を守る気概等についての記述がない、もしくは少ない。自衛隊違憲論は削れ、原発は安全だ」等々の教科書攻撃に端を発し、自民党教科書問題小委員会が、(1)現行の教科書採択制度を都道府県単位に拡大する (2)検定にあたる教科書調査官を増員する (3)検定基準、規則の徹底を図る (4)学習指導要領の見直し (5)広域採択制や教科書の発行に関する現行法を一本化して新たに法律を制定する等の五項目からなる改革案をまとめたと報道されている。
 わが国の教育の根本理念は教育基本法の前文に「われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期する」と宣言されており、それに関連して、同法第十条第一項で「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」と定めている。また、教科書検定の審査については、「教科書の誤記、誤植その他の客観的な誤り、教科書についての技術的事項および教科書内容が教育課程の大綱的基準内にあるかの諸点にとどめるべきであつて、その限度を超えて、教科書の記述内容の当否にまで及ぶときは、検定は教育基本法第十条に違反する」という裁判所の判断(東京地判昭四五・七・一七)もある。
 よつて、現在、国民の注目を集めている、この「教科書問題」に対し、以下の点について政府の見解を承りたい。

一 教科書批判の形で「戦後教育の見直し」が論じられ、特に「民主教育」、「平和教育」への批判が行われているが、この事に対し政府はいかなる見解と対応策を持つているか。

二 偏向教科書問題が論じられているが、何をもつて「偏向」といわれていると政府は考えるか、そして、そのような批判に対して、どのように対処していくつもりであるか承りたい。

三 検定制度の強化は、教科書の固定化につながると思われるが、現行の教科書検定制度についての見解と今後の方針について承りたい。

四 採択制の広域化は、教科書選定から現場の教師を引き離す“準固定化”だとの批判があるが、現行の教科書採択制度についての見解と今後の方針について承りたい。

五 「学習指導要領」の改善が論じられているが、これについての見解を承りたい。

六 「財政再建」の立場からの教科書有償化の動きがみられるが、この件に関する政府の見解を承りたい。

  右質問する。