質問主意書

第94回国会(常会)

質問主意書


質問第一一号

政府の対外経済援助に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十六年四月二十四日

秦 豊   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   政府の対外経済援助に関する質問主意書

 対外経済援助(ODA)の倍増計画自体は結構だが、現行ないし今後の対外援助については、再検討を要すべきポイントが少なくはあるまい。次の項目に対し内閣の見解を的確に示されたい。

一 外務省は、「援助評価委員会」なるものを既に設置したのか。既設ならばその目的、構成、ここ一両年の作業スケジュールは如何。

二 現行の四省庁による要請ベースの連合審査は、的確且つ十全に機能していると断言できるか。要請された金額の妥当性についてのチェックが甚しく甘いとする批判については如何か。

三 一つの具体例としてインドネシアの一肥料工場のケースを挙げてみる。昭和五十五年五月に行われた入札において三井グループ六百九十七億円、三菱グループ七百五億円、トーメングループ七百三十億円が応札結果であつたが、ちなみに日本プラント協会が行つた事前の設計調査では「五百億円を超える計画ではない」とされていた。政府は、これに対し当初四百七十五億円の円借款を決定していたのであるが、その後田中通商産業大臣の現地訪問以後、更に二百億円の追加借款の供与が決まつている。関係者ないし専門家の間でもその余りにも劇的な展開ぶりが話題になつたものである。当初の決定自体と更に追加借款の決定経緯、根拠、理由を明らかにされたい。

四 国際的な傾向は、いわゆる「ヒモなし方式(アンタイド・ローン)」の増加であり、「いくら援助金額を増やしてみても結局は自国企業に還元されるだけではないのか」とするわが国に対する厳しい批判の存することを銘記すべきである。政府の対外経済援助、無償援助、円借款、国際機関への出資の三部門のうち特に前二項については、改めて自戒と点検を怠つてはなるまい。今後の対外経済援助についての政府の基本的な方針、重点を明示して頂きたい。

五 更にレーガン政権が、今後要請を強めてくる「ソ連並びにソ連圏を利することのないような選別的な対外援助」に同調を打ち出す方針なのか。それとも日本独自の対外援助方式、政策を特にいわゆる総合安全保障政策の枢要な一環として強く展開する考えなのか。

六 対外経済援助は、現行の単年度予算では執行が難しいのではないか。むしろ五カ年位の中期計画的な幅をもつて援助達成目標、対象分野別・地域別実施計画、年度別コミットメント枠等を明らかにすべきではあるまいか。

七 念のため今後の重点援助対象国を列挙して頂きたい。

八 わが国の援助予算執行率が低いのは、被援助国のニーズや要望、その優先度などが的確に把握されていないためではないのか。そこにも商社が作り上げたニーズに振りまわされる一因があろう。援助実施機関の海外機能を強化する具体策を持つているのか。

  右質問する。