質問主意書

第93回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質九三第一一号

  昭和五十五年十二月九日

内閣総理大臣 鈴木 善幸   


       参議院議長 徳永 正利 殿

参議院議員鈴木一弘君提出税制に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員鈴木一弘君提出税制に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 所得税の納税者は、給与所得者、事業所得者等様々であり、また、社会保険料負担の状況等計算の基礎となる前提も区々であり、昭和五十三年以後三年間における所得階層別の所得税の増加額を具体的に示すことは困難である。
 なお、一般的に、累進税率が適用される所得税においては、所得の増加割合に対し所得税額の増加割合が上回ることになるが、我が国の場合、個人所得に対する所得税負担率は主要諸外国のそれに比べかなり低い水準にある。
(2) 昭和五十八年までの物価、賃金の上昇率等計算の前提となるべき計数が明らかでないので、給与所得者の可処分所得等の推移について具体的試算を示すことは困難である。
(3) 我が国の現下の財政事情等からみて、所得税減税を実施し得る状況にはないと考える。
(4) 控除対象配偶者の所得要件の問題については、配偶者に所得のある世帯とない世帯との税負担の均衡等の問題があり、慎重に検討してまいりたい。
(5) 課税の公平確保については、そのために必要な納税環境の整備という観点から今後具体的な検討を進めるほか、執行面においても、納税者の納税道義の高揚を図るとともに、高額・悪質な脱税を行つている者に対する調査を重点的に実施することにより、適正・公平な課税の実現に努めてまいりたい。
 我が国の現行間接税は個別消費税体系をとつているため、民間最終消費支出に対する間接税等の割合が主要諸外国に比して低く、しかも、この割合は長期的に低下する傾向にある。御質問のいわゆる中期答申においては、このような傾向は、所得課税とあいまつてバランスのとれた税制を形成し、税体系全体として、制度、執行両面にわたり、実質的な負担の公平を期していくという観点から問題があると思われるとされたところであり、御質問の文言は、このような認識に立つて述べられているものと理解される。

二について

(1)及び(2) 昭和五十六年度税制改正において法人税率の引上げを行うかどうか、引上げを行うとした場合に引上げ幅をどの程度にするかについては、歳出の縮減合理化の状況、税収の動向、各税目の負担水準等を考慮しつつ、現在検討を行つているところである。
(3) 中小法人の軽減税率の取扱いについては、右に述べた法人税率の問題の一環として、現在検討を行つているところである。
(4) 交際費に対する課税については、累年強化され、既にかなりの程度に達しているが、今年度末に現行制度の適用期限が到来することから、交際費支出の状況等を勘案し、現在検討を行つているところである。

三について

 農地についての相続税の納税猶予の特例は、農地については法制上所有と経営が不可分とされている等の特殊事情があることを考慮して設けられているものである。
 中小企業者の事業用財産については、農地と同様の事情にあるとは認められず、農地と同様の制度を設ける必要はないと考える。

四について

 広く消費に着目する間接税については、いわゆる中期答申において、引き続き論議を重ねることが適当であるとされたところであるが、その仕組みについては、今後、新たな観点から、諸外国の立法例や沿革等も参酌しつつ、我が国の経済取引の実情に即して具体的に検討していく必要があるとの考え方が示されているにとどまつている。政府としては、このような観点を踏まえて、今後、検討してまいりたいと考えている。