質問主意書

第93回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質九三第七号

  昭和五十五年十二月十二日

内閣総理大臣 鈴木 善幸   


       参議院議長 徳永 正利 殿

参議院議員二宮文造君提出沿道環境対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員二宮文造君提出沿道環境対策に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 環境影響評価の法制化のため、従来から努力しているところであるが、本年五月、政府としての法案をとりまとめた旨閣議に報告の上、同法案につき、現在、自由民主党政務調査会において御検討願つている。
(2) 昭和四十七年六月の閣議了解「各種公共事業に係る環境保全対策について」により、国又は政府関係機関等は、各種公共事業を実施しようとするときは、計画の立案、工事の実施等に際し、当該公共事業の実施により環境保全上重大な支障をもたらすことのないよう一層留意するとともに、国の行政機関は、その所掌する公共事業について、事業実施主体に対し、あらかじめ、必要に応じ、環境保全上の調査研究を行わしめ、その結果に基づいて所要の措置をとらしめる等の指導を行うこととしており、この趣旨を踏まえ、公有水面の埋立て、港湾計画等は個別法の手続に際し、道路、ダム、宅地開発、新幹線鉄道等の公共事業、電源立地等は関係省庁の通達等により、環境影響評価が実施されている。
(3) 道路事業においては、本州四国連絡橋(児島-坂出ルート)等の事業について環境影響評価を実施し、その結果を踏まえて事業を実施している。

二について

 自動車の総量規制については、その内容が必ずしも明確でないが、例えば広範な地域及び長い時間帯にわたつて自動車交通総量を直接規制することは、自動車交通が国民生活と密接にかかわりあつていることから、問題が大きいと考える。
 政府としては、個々の自動車から発生する排出ガス及び騒音の規制を行うとともに、地域の実情に応じ、環境の保全に配慮したバイパス等の整備、道路構造の改善、沿道の整備、都市総合交通規制等の交通管理、大量公共輸送機関の充実、物流の合理化等の施策を総合的に推進することにより、道路交通公害の防止・軽減に努めてまいりたい。

三について

 道路交通騒音対策について、関係省庁は、従来から緊密な連けいをとり、個々の自動車から発生する騒音の規制を逐次強化するとともに、バイパス等の整備、遮音壁の設置、環境施設帯の整備等の道路構造の改善、都市総合交通規制等の交通管理等の施策を鋭意講じているが、いまだ必ずしも十分な成果を挙げているとはいえない状況にあり、幹線道路の沿道の整備に関する法律に基づく措置を含め、今後とも総合的な道路交通騒音対策の推進に努めてまいりたい。

四について

 自動車騒音については、都道府県及び市町村が当該地域を代表すると思われる地点又は騒音に係る問題を生じやすい地点において測定しており、その測定結果を集計整理した自動車交通騒音実態調査報告によると、昭和五十四年に朝、昼間、夕及び夜間のすべての時間帯について測定の行われた延べ三千五百八十二地点のうち、すべての時間帯において環境基準値以下のものは延べ六百八地点であり、いずれかの時間帯において要請限度値を超えるものは延べ七百八十二地点となつている。
 このうち、首都高速道路及び阪神高速道路の沿道における測定結果を見ると、延べ四十六測定地点のうち、すべての時間帯において環境基準値以下のものは延べ三地点であり、いずれかの時間帯において要請限度値を超えるものは延べ二十五地点となつており、自動車交通騒音に関する苦情も提起されている。
 なお、建設省が高速自動車国道、一般国道、都道府県道等の主要な道路について昭和五十三年度に調査した結果では、夜間の環境基準値を超える道路の延長は一万八千キロメートル、夜間の要請限度値を超える道路の延長は六千四百キロメートルと推計されている。

五について

(1) 都市高速道路における沿道環境整備要綱の適用の事例は、ない。
(2) 都市高速道路においては、沿道の土地利用の状況、道路の構造、道路交通騒音の状況等を総合的に検討し、遮音壁の設置、環境施設帯の整備等の措置を講ずることとしており、昭和五十四年度までに約二百キロメートルの道路について遮音壁を設置したほか、環境施設帯の整備を鋭意進めているところである。
(3) 道路構造令を見直すことについては、経済社会情勢の変化等を総合的に勘案の上、沿道環境の面も含め、検討してまいりたい。

六について

(1) 都市高速道路の沿道の住宅の防音工事の助成は、夜間の自動車交通騒音が計算値、実測値ともに六十五ホン以上であること等の要件を満たす住宅の所有者が窓、壁等を防音上有効な構造とするために行う工事に要する費用について、住宅の構造等に応じ、一定の額を限度として助成することとしており、昭和五十四年度までに防音工事の助成が行われた住宅は、約八千四百戸である。
(2)及び(3) 防音工事の助成の要件である騒音の基準については、現に及んでいる自動車交通騒音の大きさを表わす実測値を用いることに加え、道路が適法に利用されている場合における自動車交通騒音の大きさをは握するため、計算値を併用することが妥当であると考えている。
(4) 有料の自動車専用道路以外の幹線道路については、幹線道路の沿道の整備に関する法律第十三条第一項による防音工事の助成の措置により対処していく考えである。
(5) 日本住宅公団大島六丁目団地においては、首都高速道路公団が昭和五十四年二月から同年三月までの間に窓を二重化する工事等の防音工事について、百六十四戸に対し、助成を行つたところである。