質問主意書

第93回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質九三第一号

  昭和五十五年十月三十一日

内閣総理大臣 鈴木 善幸   


       参議院議長 徳永 正利 殿

参議院議員峯山昭範君提出高速自動車道に係る低周波空気振動公害の対策樹立等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員峯山昭範君提出高速自動車道に係る低周波空気振動公害の対策樹立等に関する質問に対する答弁書

一について

 環境庁においては、昭和五十一年度から低周波空気振動について、呼吸波形等の生理的影響を中心とする調査研究を行つているが、現段階においては、医学的に生理的影響、健康影響等を明らかにする結果は得られておらず、更に知見の集積を図るべく、今後とも、各方面の協力を得て各種の調査研究を行う必要があると考えている。

二について

 振動は、地盤の状況等によつてその影響が大きく異なるなど複雑な要素が多く、現時点において、振動に係る環境基準を設定することは困難である。
 公害対策基本法第二条第一項の「振動」には、地盤を媒体とする振動に加え、空気を媒体とする振動も含まれるものと考えるが、このうち、地盤振動は地面を伝わつて足等の接地部分から伝わるものであり、低周波空気振動は空気から直接に伝わるものであることから、この間に相関関係はないものと思われる。
 振動規制法の制定に際しては、当時、地盤振動については、各種調査研究の実施により、振動の感覚部位、生理機能の変化に至る経路等が解明されていたため、同法に基づく規制の対象としたが、低周波空気振動については、現時点においても感覚部位が特定できないなど影響の科学的解明がなされていない状況にある。このようなことから、低周波空気振動について法規制等を実施するためには、今後なお一層の調査研究を要すると考えているが、現実に問題とされている実態を踏まえ、昭和五十三年度から工場施設等の発生源に係る当面実施可能な防止措置等について調査検討を行つている。
 また、騒音、振動に係る公害については、その発生の態様等に種々の特殊性があるので、公害健康被害補償法の対象とするにはなじまないものと考える。

三について

 香芝高架橋周辺の低周波空気振動は、香芝高架橋等から発生していると推定されるが、その程度については、現在、低周波空気振動の周波数の範囲を含めレベルの測定・解析の方法が確立されていないため、一概に述べることはできない。
 当該地域では、一部家屋の建具の振動や頭痛・肩こり等の苦情があり、被害者同盟から日本道路公団(以下「公団」という。)に対し、これまでに、被害住民の健康診断及び医療補償の実施、低周波空気振動の発生原因の究明と防止対策の推進、交通規制の実施等の要求がなされている。一方、公団ではこれまでに、ジョイント部しや閉箱の設置、舗装不陸整正、ジョイント部改良、試験家屋の設置と調査、一部家屋に対するアルミ建具の試験的設置を実施してきたところである。低周波空気振動の人体への影響の科学的解明がなされておらず、規制基準等も存在しない現段階では、公団においては高架橋及び家屋の補修以外の対策を講ずる考えはないが、今後とも、低周波空気振動の発生メカニズムの調査研究及び発生源対策の検討を行う予定である。
 環境庁においては、低周波空気振動を低減するために可能な限りの対策が講じられることが望ましいとの基本的考え方の下に、公団に対して対策の実施を働きかけてきたところであり、公団において前記のような各種対策が実施されてきた。