質問主意書

第93回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二号

官吏服務紀律の解釈と運用の実態等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年十月十六日

秦 豊   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   官吏服務紀律の解釈と運用の実態等に関する質問主意書

 官吏服務紀律(明治二十年七月三十日勅令第三十九号)は、「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」(昭和二十二年四月十八日法律第七十二号)第一条により、昭和二十三年一月一日に失効したとすべきところ、同日施行された「国家公務員法の規定が適用せられるまでの官吏の任免等に関する法律」(昭和二十二年十月二十一日法律第百二十一号)第一条第一項により、「従前の例による」として、国家公務員法(昭和二十二年十月二十一日法律第百二十号)の規定が適用されることにはならなかつた特別職の国家公務員に対しては、なお、部分的に適用があると聞く。
 そこで、官吏服務紀律の適用及びその適用下で現実に発生した事態の責任の所在等に関し、以下、鈴木善幸首相の御答弁を賜りたい。

一 国家公務員法第二条は、第一項により国家公務員の職を一般職と特別職とに分け、第三項に制限列挙される特別職に属する職員に対し、第五項により同法の規定を適用しないとする。

(1) 第三項第一号から第十八号(第十七号は欠缺)に列挙される職員の各々について、官吏服務紀律の適用の有無を根拠法令とともに明らかにされたい。
(2) 右において、官吏服務紀律の適用を受けない職員のうち、なお他の法令による服務に関する規定の適用を受けないものがあれば、それら職員に対し服務に関する規定を法令で定めなかつた理由を各職員別に示されたい。
(3) 官吏服務紀律の制定の趣旨(立法の趣旨)及び勅令たる同紀律を今なお存続させている理由は、それぞれ何か。
(4) 官吏服務紀律の適用を受ける職員は、その資格を得るにあたり、その旨告示されるのか。告示されないのであれば、その理由は何か。
(5) 官吏服務紀律を所管する府省庁はどこか。局部課のレベルで示されたい。

二 憲法秩序の維持回復を前提として、成田開港前後から継続して追求されてきた成田問題の適正かつ合理的な解決、知的解決のための方策が、運輸省側から一部、しかも不正確にリークし、そのため両当事者の誠実な努力が、昨年七月十六日付読売新聞朝刊一面トップの報道及び翌朝の同紙五面の解説記事(安原幸雄記者)により水泡に帰してしまつたと聞く。続く同月二十二日付同紙千葉版は、加藤紘一内閣官房副長官(当時)との折衝の任にあつた三里塚芝山連合空港反対同盟(戸村一作委員長・当時)の事務局次長(内閣官房副長官に相当)の島寛征氏が辞表を提出するはめに至つた経緯等につき報道していた。

(1) 勅令たる官吏服務紀律は、運輸政務次官にも、今なお適用されるのではないのか。
(2) 官吏服務紀律第四条第一項にある「官の機密」とは、国家公務員法第百条第一項の「職務上知ることのできた秘密」と同じ概念規定を有するのではないのか。両者に差があれば、その差の内容を示されたい。
(3) 成田開港前後の福田内閣下とは異なり、一部リークという事態を招来した大平内閣下にあつては、加藤副長官と島次長との折衝は、国家公務員法第百条第一項にいう「職務上知ることのできた秘密」としては扱われてはいなかつたのか。
(4) 松尾道彦運輸省航空局飛行場部新東京国際空港課長(当時)は、成田問題の本格的な解決につき、大平首相より事実上全権を委任されていたといわれる加藤副長官らの解決方針に反対であつたとも聞くが、事実か。
(5) 成田問題の解決に実質的能力を失つている運輸省、その職員の中にあつて、当時、加藤副長官らの成田問題の解決方針に反対であつた者が、運輸大臣以下他にいれば、その全ての者の氏名と役職名(当時)を示されたい。
(6) 右リークがどこから起り、どのような動機・目的で報道されたかについては、内閣官房において、当時、既に調査済みのことと拝察される。報道の自由、そのための報道権行使自体は厳格に尊重されねばならないことはいうまでもないが、しかし、不正な動機・恣意的独断ないし他事情考慮に基づく報道権行使は、やはり、報道権濫用ということになるのではないのか。

  右質問する。