質問主意書

第92回国会(特別会)

質問主意書


質問第六号

東北新幹線(東京・大宮間)の建設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年七月二十五日

秦 豊   


       参議院議長 徳永 正利 殿


   東北新幹線(東京・大宮間)の建設に関する質問主意書

 去る五月二十日付毎日新聞朝刊五面「記者の目」欄の報じるところによると、成田パイプライン建設に係る三浦和夫記者(成田支局)のインタビューに応えて、大塚茂新東京国際空港公団総裁は、今井栄文総裁を頂いた頃の空港公団では、軟弱地盤ゆえ不可能とされた花見川ル-トでのパイプライン埋設に関し、これが期限内に可能であるとし、しかも、公団の辞書に「不可能」という文字はない。不可能を可能にするのが公団だと言明している。
 一方、国鉄が建設の責務を有する東北新幹線(東京・大宮間)については、昭和四十六年十月に工事実施計画の認可を得ていたにもかかわらず、以来十年近くを経過するも、未だ開業の運びには至つていない。その見通しさえない。軟弱地盤ゆえ地下方式が不可能となり、これを変更した昭和四十八年三月の高架方式発表以来、地元合意が得られないからという。これは一体どうしたことか。
 そこで、不可能を可能にするという空港公団の成田パイプライン建設に対比さるべく、軟弱地盤ゆえ地下方式を放棄した国鉄の東北新幹線(東京・大宮間)建設につき、国鉄及び空港公団の双方に監督責任を有する塩川正十郎新運輸大臣の御見解を以下賜りたい。

一 全国新幹線鉄道整備法第九条第一項の規定により、東北新幹線(東京・盛岡間)について行われた工事実施計画の認可申請、同認可、同変更認可申請及び同変更認可の各年月日を、同法施行規則第二条第一項第二号にいう「工事の区間」ごとに、その全てを示されたい。併せて、各々変更認可の対象となつた変更事項の全て及びそれに応じた変更の事由(要旨)を示されたい。

二 右において、現在に至る工事の進捗状況はどうか。「工事の区間」ごとに、用地取得、土木工事、施設工事、試運転などの状況を示されたい。

三 右一において、工事関係の年度ごとの予算・決算はどうなつているのか。「工事の区間」ごとに、現在に至る用地取得費・土木工事費・施設工事費・試運転経費の別に示されたい。

四 東北新幹線(東京・盛岡間)の建設及び開業は、財政再建を迫られている国鉄の経営に、どのような影響をもたらしているか。

(1) 昭和三十九年度に欠損金を計上して以来、現在に至る年度ごとの累積欠損金及び同じく長期負債に係る債務残高を、一般勘定及び特定債務整理特別勘定の別に示されたい。
(2) 東北新幹線(東京・盛岡間)の建設及び開業は、国鉄の財政再建にどのような影響をもたらす見込みか、定量的に示されたい。また、開業時期の延期は、どのような効果をもたらすのか。
(3) 右(2)において、東北新幹線(大宮・盛岡間)の「暫定」開業とした場合は、国鉄の財政再建にどのような効果をもたらすことになるのか。
(4) 羽田空港における国内航空便の便数増を許容ならしめた成田空港の開港は、国鉄の財政再建にどのような影響をもたらしたか。また今後もたらす見込みか、定量的に示されたい。とりわけ、東北新幹線(東京・盛岡間)の開業に対してはどうか。

五 昭和五十五年一月十二日付で申請され、同月二十五日付で変更認可を得た東北新幹線(東京・大宮間)に係る工事実施計画について、

(1) 右変更認可に係る「工事の区間」、変更認可事項及び変更の理由をそれぞれ示されたい。
(2) 右変更認可申請は、関係する地方公共団体や地元住民の理解と協力を得た上でのものか。

(イ) 地方公共団体に対しては、どのような手続で、理解と協力を得たのか。
(ロ) 地元住民に対しては、どのような手続で、理解と協力を得たのか。
(ハ) 成田パイプラインについては、空港公団が地方公共団体や地元住民の理解と協力を得られるよう努めることについて空港公団を十分指導していく方針であつたという(内閣参質八〇第二五号)が、国鉄に対しては、どのように指導してきたのか、具体的に示されたい。
(ニ) 地方公共団体や地元住民の理解と協力が得られる見込みがなくなつた場合、どのような状況下で(どのような要件が成立したとき)、収用手続に入るよう国鉄を指導するのか、また、国鉄は収用手続に入るのか。
(ホ) 昭和四十二年改正土地収用法(法律第七四号)は、起業者としての国鉄にとつて、用地取得をより容易にしたか、より困難としたか、理由を付して示されたい。

六 成田パイプライン建設に係り当初不可能とされた軟弱地盤での地下埋設を可能とした空港公団に対し、東北新幹線(東京・大宮間)建設に係り軟弱地盤での地下埋設を不可能とした国鉄について、

(1) 地下埋設技術に関し、国鉄及び空港公団にその技術力及び技術開発力に、どのような能力差があるのか。またそれは何に起因するのか。
(2) 地下埋設技術に関し、鉄道技術研究所は国鉄の技術力及び技術開発力にどのような貢献をなしてきたか、また今後なし得る見込みか。
(3) 地下埋設技術に関し、国鉄は空港公団からその技術力及び技術開発力を導入する考えはないか、理由を付して示されたい。

  右質問する。