質問主意書

第91回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質九一第一四号

  昭和五十五年五月九日

内閣総理大臣臨時代理             
国務大臣 倉石 忠雄   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員二宮文造君提出木材価格の安定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員二宮文造君提出木材価格の安定に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 今回の木材価格高騰の原因は、産地国における原木の輸出規制を背景とする外材原木の産地価格の高騰、円相場の低落、海上運賃の高騰等を反映したものであると考えられる。このため、政府においては、木材需給対策中央協議会における四半期ごとの主要木材の短期需給見通しの作成及びその公表とこれに基づく安定輸入のための関係業界に対する指導を強化するとともに、昭和五十四年一月及び六月には備蓄合板の放出を行い、木材価格の安定に努めているところである。
(2) 最近の木材関連業における製品価格と原木価格との関係の背景には、原木価格が高騰している反面、需要の大宗を占める住宅着工量の伸び悩み、製品輸入の増加、非木質系資材との競合等製品価格を抑制する要因があるものと考えられる。このため、改良型在来工法住宅の開発普及などにより木材需要の拡大に努めるほか、新技術の開発、設備の近代化、生産方式の適正化など木材関連業の構造改善のための事業を実施しているところである。
(3) 長期的に我が国の木材需給の安定を図るため、造林、林道等の林業生産基盤の整備、国産材の流通・加工体制の充実等により国内の木材供給力の向上を図るとともに、外材産地国に対する森林資源の維持培養のための技術協力等を通じ外材輸入の安定化に努めているところである。

二について

 今回の調査は、保税地域の有効利用を図る見地から執務の参考に資するため、木材を含む一部貨物を対象として保税地域の在庫状況、蔵置期間及び転売回数について調査を実施したものであり、特に、一般に公表することは考えていない。
 なお、今回の調査結果では、目下保税地域の利用が阻害されるような在庫状況にはないが、今後問題が生じるような事態が発生すれば、適切な措置をとることとしている。

三について

 造林等に対する資金については、従来から、農林漁業金融公庫資金においてその中でも最も長期かつ低利の貸付制度が設けられているほか、昭和五十四年度から林業等振興資金融通暫定措置法に基づき、造林資金、林道資金の償還期限及び据置期間の特例を設ける等の措置を講じているところである。

四について

 木材の有効利用技術の確立については、現在国の試験研究機関等を中心に育林技術、木材の高度加工技術、間伐材等小径木の利用技術等に関する研究開発を鋭意推進しているところであり、また、都道府県の林業普及指導職員による普及指導、技術研修会の開催、開発された技術の導入に必要な資金の融通等を通じてこれらの成果が十分地域に普及し、定着するよう努めているところである。
 また、共販体制の整備、国産材の生産及び流通の合理化を図るための国産材産業振興資金の融通等の措置を通じて木材の流通機構の整備等に努めているところである。

五について

 廃材等の利用については、既にパルプ利用が行われているほか、国の試験研究機関を中心に飼料及び土壤改良剤等への利用開発に関する研究を進めている。更に、昭和五十五年度においては、廃材等について、現代の社会構造及び生活様式に見合つたエネルギー源としての活用の促進をねらいとした調査事業を実施することとしている。また、古紙の再生利用については、国の試験研究機関等において都市ごみ中の紙をパルプとして選別回収する技術の研究開発を進めているほか、民間の団体において、古紙の再生利用に関する技術の開発及び向上のための研究を行うこととしている。
 なお、昭和五十五年度においては、新たに設置する木くず燃焼装置に対し特別償却を認める税制上の優遇措置を講じたところである。

六について

 森林・林業及び木材の有効利用の重要性について広く国民の理解を得ることは、極めて重要な課題であり、このため、従来から、テレビ、映画等各種の広報媒体を通じた広報活動を実施するとともに、特に間伐材等小径木についてその利用促進のための普及展示を行う等の措置を講じているところである。

七について

(1) 「重要な林産物の需要及び供給に関する長期の見通し」については、目下改定作業を進めているところである。中長期的にみた我が国の木材の需給動向については、需要は、経済基調の変化から大幅に増大することは見込まれないが、戦後植栽された人工林が徐々に伐期に達してくることから、木材生産量は漸増していくとみられること、また、木材輸入は産地事情の変化等から外材供給量が減少に転ずることも考えられること等から、国産材の供給比率はすう勢としては現状より高まつていくものと考えている。
(2) 政府においては、従来から、主要木材についての四半期ごとの短期需給見通しの作成・公表と、これに即した安定輸入のための関係業界に対する指導、木材の流通在庫・価格に関する情報の収集及び提供、更に、木材の備蓄事業の実施等の措置を講じてきたところであり、これらの措置が外材の秩序ある輸入の確保に資してきたものと考えている。