質問主意書

第91回国会(常会)

答弁書


答弁書第一二号

内閣参質九一第一二号

  昭和五十五年四月十五日

内閣総理大臣 大平 正芳   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員二宮文造君提出戦後ソ連強制抑留者の処遇改善に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員二宮文造君提出戦後ソ連強制抑留者の処遇改善に関する質問に対する答弁書

一について

 先の大戦に関しては、戦中戦後を問わず、国民のすべてが、多かれ少なかれ、戦争による各種の犠牲を被つているが、これらのいわゆる戦争犠牲については、国民の等しく受忍しなければならなかつたところであり、国に補償する義務があるとは考えていない。
 しかしながら、政府としては、恩給法、戦傷病者戦没者遺族等援護法、戦傷病者特別援護法、引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律等により、特に一般の国民とは違つて特別の措置を要するものについて必要な援護等の措置を講じているところであり、これら一連の措置をもつて、この種の問題に対する国の措置は終わつたものと考えている。
 ソ連強制抑留者についても、抑留に起因して死亡した者の遺族及び抑留に起因して障害を受けた者に対しては、恩給法、戦傷病者戦没者遺族等援護法、戦傷病者特別援護法により種々の給付を行うなどできる限りの援護等の措置を講じているところである。
 したがつて、ソ連強制抑留者に対する補償問題について、今後改めて特別の立法措置を講ずる考えはない。

二について

 ソ連抑留中死亡者の埋葬地の確認等については、ソ連からの帰還者による事情聴取資料をソ連政府に渡し、機会あるごとに調査を依頼してきたところである。ソ連政府からは、既に通報した以外には何ら情報を持つていないとの回答が寄せられているが、今後とも更に外交ルートを通じ努力したいと考えている。
 また、遺骨収集については、ソ連政府から通報のあつた墓地につき、昨年七月外交ルートを通じ申入れを行い本年三月にも督促を行つているが、ソ連政府は、目下検討中であるとのみ回答してきている段階である。ソ連政府との間で合意に達すれば、予算措置を講じ対処してまいりたい。
 なお、その他の調査については、一についてで述べた趣旨にかんがみ、その経費を予算に計上することは考えていない。

三について

 抑留加算は、恩給制度上の特例的な措置として、辺鞭・不健康地加算等との均衡を考慮して抑留期間の一月につき一律に一月の割増措置を講ずることとしているものであつて、抑留者の個々の実態に応じてその割増率に差をつけることは考えていない。