第91回国会(常会)
答弁書第六号
内閣参質九一第六号 昭和五十五年三月十八日 内閣総理大臣 大平 正芳
参議院議員塩出啓典君提出松枯れ防止対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員塩出啓典君提出松枯れ防止対策に関する質問に対する答弁書 一について 激害型松枯損の原因については、昭和四十三年度から昭和四十六年度にかけての国立林業試験場を中心とする昆虫学、樹病学、菌学、樹木生理学、土壤学、気象学等関係各分野を網羅した共同研究において、植物病理学上の基本的な原則とされている病原体決定の手法に基づき、マツノマダラカミキリが運ぶマツノザイセンチュウが松の生理の異常をもたらす病原体であることが立証されている。 二について 特別防除の実施地域は、周囲の自然環境及び生活環境の保全並びに農業、漁業その他の事業への被害の防止に対する配慮から、松くい虫被害区域の一部にとどまつているが、これを実施している地域では、全般的にみて、十分な防除効果を挙げているところである。
三について 特別防除は、二についてで述べたように自然環境等の保全や農業等への被害防止に十分配慮して実施しているところであり、また、その効果については昭和五十二年度及び昭和五十三年度に特別防除を実施した三十一都府県において、特別防除実施箇所に定点を設定し、調査を実施したところ、定点の被害本数率は、昭和五十二年度から特別防除を実施した定点では全定点平均で、昭和五十二年度二・一パーセント、昭和五十三年度一・九パーセント(特別防除実施前の昭和五十一年度三・六パーセント)、昭和五十三年度から特別防除を実施した定点では全定点平均で、昭和五十三年度四・三パーセント(特別防除実施前の昭和五十二年度七・六パーセント)と減少しており、十分な効果を挙げているところである。 四について 環境庁が昭和五十二年度及び昭和五十三年度にわたつて財団法人「山階鳥類研究所」に委託して実施した調査は、植生、昆虫及び鳥類について各種の調査を行つたものであるが、当該調査に係る報告書は、農薬の空中散布が鳥類及びその生息環境に及ぼす影響については、必ずしも明確な結論を出したものではなく、これのみをもつて判断することは困難であると考えている。 五について 昭和五十三年度の予期せざる異常気象等により未曾有の被害が発生し、昭和五十四年度もその影響を受けて被害が増大していることから、昭和五十六年度に被害を終息させるという当初目標を達成することは、必ずしも容易ではないと考えられる。今後、総合的な防除対策を緊急に推進し、被害の減少を図り、できるだけ早い時期に終息に向かうよう最善の努力をしてまいりたい。
六について 松くい虫の防除については、特別防除を計画的に実施するとともに、特別防除の実施が困難な松林については、被害木の伐倒駆除、激害跡地における樹種転換等を重点的に実施することが、現段階では最も有効であると考えている。
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