質問主意書

第91回国会(常会)

質問主意書


質問第一八号

下水道整備の計画と実行に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年五月八日

坂倉 藤吾   


       参議院議長 安井 謙 殿


   下水道整備の計画と実行に関する質問主意書

 我が国の下水道は、欧米諸国と比してその普及が絶対的に立ちおくれていることはいうまでもない。下水道が、従来の浸水対策・公衆衛生的生活環境改善対策に加えて、公害防止政策の観点からも水質保全と利活用の立場を位置づけたことは前進である。ところが、今日の事業の進展状況を見るとき、かなりの資金投下にもかかわらず、計画達成率は極度に低く、とりわけ、流域下水道計画においては、終末処理場設置をめぐる地権者を含む地域住民と、国・地方関係行政機関との紛争は増大の傾向にある。
 この事態は、河川ならびに公共水・海域の汚染・汚濁の早期解消の課題を遠ざけることは勿論、国民生活への影響は重大である。
 よつて、以下のとおり、明確な政府の態度ならびに見解を求めるものである。
 流域別下水道整備総合計画(以下「流総」という)と、流域下水道事業計画(以下「事業計画」という)の関係、及び公害事前防止対策について、

一 下水道法(以下「法」という)の体系的立場は、まず、流総について建設大臣の承認を受け、承認された計画にもとづき事業計画を策定し、同大臣の認可を得て実行に移すべきものと解するが如何。

二 現在、法第二条の二各項の手続きを了した流総は昭和四十八年一月二十四日承認された愛知県豊川を第一号とし、以下昭和五十五年三月五日承認となつた東京都多摩川、荒川等第二十号に至る二十水域のみである。ところが、事業計画による着手実行状況は、流総手続き未完のまま、法第二十五条の三各項による手続きと認可が先行されている。このような事態は、明らかに行政執行の誤りと解するが、その見解と責任の所在如何。

三 二に述べた事業計画先行が妥当とするならば、法第二条の二第五項による建設大臣が承認に当たつて行う環境庁長官との協議義務は、全く空文に等しく、何等の価値も存しないこととなるが見解如何。

四 事業計画は、必然的に巨大終末処理場の設置を要し、そこには汚水が集中され、汚水処理後の大量汚泥が生じる。従つて、汚水処理を行つた後の放流水の水質がどのようになるかとの単なる水質管理のみの観点では不十分であり、処理構造如何によつては著しく発生する臭気、ならびに、蓄積される汚泥の処理方によつては大気を汚染する等、人の健康への影響など環境全般にわたつて検討されなければならないものであり、この計画段階にこそ、環境庁長官との具体的協議が必要とされるべきものと判断するが、その見解を問う。

  右質問する。