質問主意書

第91回国会(常会)

質問主意書


質問第八号

野菜の供給安定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年三月二十九日

二宮 文造   


       参議院議長 安井 謙 殿


   野菜の供給安定に関する質問主意書

 米を主食とし、野菜、魚、畜産物等を副食とする我が国の食生活は、栄養的にみても極めてバランスのとれたものであり、日本人の平均寿命の長さも、この食生活によるところが大きいといわれている。
 副食の中では、野菜が中心的地位を占めており、ビタミンの補給源として重要であるばかりでなく、最近ではその繊維が、人体の生理に重要な係わりを持つことが明らかにされ注目を浴びている。
 したがつて、野菜は国民の食生活と健康のためにも常に安定的に供給される必要がある。
 しかるに、昨年の秋以降、野菜は異常な供給不足に陥り、価格も前年に比べ数倍ないし数十倍に及ぶ暴騰を続けた。最近はやや落ちつきを取り戻しつつあるとはいえ、なお、例年に比べ高水準にある。
 この直接の原因は、昨年秋以降の再度にわたる台風の襲来、長雨、病害虫の発生等にあるとされているが、政府の取つた対策が適切さを欠いていたことも事態を深刻化させた一因になつていると思われる。
 そこで、この際、国民の食生活の安定と健康を守る立場から、次の諸点について政府の明確な見解を求めるものである。

一 価格安定対策について

(1) 昨年秋の台風の後、十一月に入つて肥培管理、再播種、再定植等の指導をしたが、識者からは、遅きに失したとの批判が出ているが、対策が遅れた理由は何か。
 また、今年に入つて、野菜価格安定緊急対策が五億一千七百万円の予算で、二月十五日から行われたが、この時期には既に、野菜価格はピークに達していた。そうなる前に、なぜこのような総合的な対策を取らなかつたのか。
(2) 昨年から今年にかけて、産地でのいわゆる畑買い、青田買いは目に余るものがあつた。農協の共販事業を突き崩し、現行の野菜価格安定制度を危くするこのような商人の行動に対して、有効な対策を講じえなかつたのはなぜか。
 一部の県では、その実態調査を行つたようであるが、今後同様の事態を繰り返さないためにも、詳細な調査を広く実施し、それに基づいて対策を確立すべきだと思うがどうか。
(3) 緊急対策の一環として、野菜供給安定基金の野菜高騰時対策実験特別事業である契約キャベツの放出が行われたが焼け石に水であつた。
 本事業が、真に高騰時対策として有効性を発揮するためには、契約規模の拡大、対象野菜の増加等思い切つた事業の拡充を図る必要があるのではないか。
(4) もう一つの高騰時対策に、野菜供給安定基金の野菜売買保管事業があるが、皮肉なことに、その対象野菜である馬鈴しよ、玉ネギが豊作であつたため、放出の機会がなく、折角の制度も、今回は機能しえなかつた。
 現在、本事業の対象野菜が、馬鈴しよ、玉ネギの二つに限られているのは、主として、保管技術上の理由からであると思われるが、インスタント食品の普及に伴い、冷凍野菜、乾燥野菜等、野菜加工、保管技術の進歩と需要の増大が見られる今日、対象野菜を追加することも可能なのではないか。
 また、技術的に保管の困難な野菜は、いわば畑での保管である前述の契約栽培制度によつて、これに代えることを考えるべきだと思うがどうか。

二 生産対策について

(1) 近年、野菜は、暴騰、暴落を繰り返すようになつている。その大きな原因の一つとして、主産地化の進行の結果、比較的少数の大産地の豊凶が、直ちに、大消費地市場への供給量の変動につながるようになつたことが挙げられる。
 したがつて、このような傾向を緩和するためにも、小規模な多数の産地を育成し、供給の弾力性を取り戻す必要があるのではないか。
 そのためには、野菜指定産地の指定要件の大幅な緩和等、小規模産地の振興策を図るべきではないか。
(2) 近年、野菜主産地における地力の低下が激しい。これは、化学肥料の長年にわたる多用の結果であるが、異常気象時における極端な収量の低下につながるものとして、専門家も事態を憂慮している。こうしたことも今回の異常な生産減に拍車をかけた要素になつたと思われる。
 したがつて、有機物増投等のための地域農業生産総合振興事業等の土壌対策を飛躍的に拡充すべきではないか。

三 重要野菜需給調整特別事業について

(1) 水田利用再編対策に伴う野菜への転作等によつて、野菜生産が、基調としては、過剰基調に転じたとして、昭和五十五年度から重要野菜需給調整特別事業を発足させることにしている。
 しかし、生産者サイドに立つた作付や出荷の調整が強力に行われれば、野菜の高値安定につながり、結果として、消費者に大きな負担をかける結果にならないか。
 特に、作付制限を厳しく実施したときに、今回のような自然災害が重なれば、深刻な事態になることは必至である。
 需要見込量の作成、作付計画及び出荷計画の承認に当たつて、これらの点をどう配慮していく考えか。
(2) 高値につながりやすいこの種の生産者対策事業を実施するからには、同時に、消費者のための高騰時対策が一体的に進められるべきである。
 しかるに、高騰時対策である野菜価格安定緊急対策事業の予算は、昭和五十四年度の十四億五百万円が昭和五十五年度では五億四千万円と、約四割に激減している。こうした状況を見る限り、昭和五十五年度における政府の野菜政策は著しく安値対策に偏つており、昨年から今年にかけて異常な高値に泣かされた消費者にとつて、納得のいかないものになつている。
 今後、如何なる基本方針のもとに野菜の供給安定対策を進めようとしているのか。

  右質問する。