質問主意書

第91回国会(常会)

質問主意書


質問第六号

松枯れ防止対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十五年三月十日

塩出 啓典   


       参議院議長 安井 謙 殿


   松枯れ防止対策に関する質問主意書

 現下の激甚型松枯れ現象は、今なおその猛威を止めることなく、全国的に拡大・蔓延しつつある。
 林野庁の調査によれば、松枯れ被害量は、昭和五十三年度は、史上最高の二〇七万立方米を記録し、五十四年度も、前年を一割も上回る被害量となろうとしている。
 昭和五十二年度より、空中散布による特別防除が実施されながら、このような結果となることに対し、国民は判断に苦しむものである。激甚型松枯れの原因を松くい虫とする林野庁の見解に反対の意見も多い。
 空中散布の結果、駆除すべきマツノマダラカミキリよりも、それ以外の各種昆虫類等が大量に死に、生態系に悪影響をもたらすとともに、周辺の人畜等に対しても安全確保の見地から大きな危惧が抱かれるに至つている。
 環境庁の委託によつて行われた財団法人・山階鳥類研究所の「森林における農薬空中散布の鳥類及びその生息環境に及ぼす影響調査報告書」も、生態系に悪影響をもたらす事実を認めている。
 このままでは、松くい虫防除特別措置法の意図や、国民の希望に反して、松くい虫を撲滅するのではなく、他の生物を撲滅し、いわゆる「サイレント・スプリング」を現出せしめるのではないかという恐れを抱かざるをえない。
 このような立場から、以下の質問をする。

一 現下の激甚型松枯れの原因を松くい虫とする説には、松くい虫のみでは松を枯死させ得ない事実、また飛来する以前に松の樹勢を弱め、ひどい場合は枯死に至らしめるところの他の要因が先行している事実からみて、単純な松くい虫説には納得しがたい。現下の激甚型松枯れの真のメカニズムについての見解をききたい。

二 空中散布による特別防除の実施にもかかわらず、逆に、松枯れ被害が激増している現状をどう判断しているか。

三 空中散布は、松くい虫駆除に対して、むしろ効果より害の方が多いという意見についてどう考えるか。もし、害よりも、効果が大きいと考えるならば、その根拠を示してほしい。

四 財団法人・山階鳥類研究所の「報告書」について、どう判断しているか。

五 松くい虫防除特別措置法の定める「五年間」の期間内に、松枯れを微損型被害に終息させられる見通しを持つているのか。もし終息しなかつた場合、空中散布を期間延長して行う考えか。

六 空中散布による特別防除を直ちに中止し、激甚型松枯れのメカニズムに関する徹底究明、特別防除の効果の検討も含めて、松くい虫駆除法を根本的に再検討する考えはないか。

  右質問する。