質問主意書

第91回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

原子力発電所に就労する者の放射線被曝対策等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和五十四年十二月二十一日

吉田 正雄   


       参議院議長 安井 謙 殿


   原子力発電所に就労する者の放射線被曝対策等に関する質問主意書

 原子力発電所に就労する者の放射線被曝の量は近年急速に増加し、由々しい問題を生じており、これら就労者の健康と生命を守るために、被曝線量の低減化を緊急にはかる事態に迫られている。
 そこで、以下の諸点について質問する。

一 就労者被曝増加の実態について

 各原子炉ごとの被曝線量は社員、請負別にどのような実態になつているか、定期検査時、その他の保守・点検時、日常的なその他の作業、事故、修理時及び、再循環ポンプ系、圧力容器関連除染・修理、制御棒及び同駆動機構点検等、作業個所別に明らかにされたい。

二 被曝管理について

1 各原子力発電所は、総被曝線量をどの程度に抑えることを目標としているか。
2 就労者個人あたりの被曝線量の管理目標値は、各発電所ごとに一日あたり、一週間あたりなど具体的にどのようになつており、また、政府としてはどのような指導を行つているか、具体的に明らかにされたい。
3 被曝線量の総計は、七八年度において前年比六〇%増の一三、〇〇〇人レムを越えるに至つた。今後、この割合で増加を続けることになるならば事態は重大である。
 政府は、年間の総被曝線量をどの程度に抑えることが望ましいと考えているか。
4 内部被曝については、十分な管理の基準もなく、管理の対象となつていないが、この点の対策をどう考えているか。また、昨年度の内部被曝量の統計を示されたい。

三 下請労働者について

1 現在、特に下請労働者の被曝線量の増加が深刻な問題になつているが、下請労働者の放射線作業に際して、どんな教育、訓練がなされているか。
2 下請労働者が職場を変えることによる総被曝線量の記録と管理はどのように行われているか、明らかにされたい。
3 現行の法規では、下請労働者の教育、訓練の管理者責任について、具体的な規定がないと考えられるがどうか。
 また、不要な被曝と障害を防止するために、一定の資格者のみに放射線作業を行わせることが望ましいと考えるがどうか。これを法令によつて規定する考えがあるかどうか。
4 前項と関連して、一定の資格、技能、知識を有する者と、未熟練で知識のない臨時作業者では、管理目標値ないし法定許容線量を区別して定めるべきであると考えるがどうか。

四 この数年の被曝データによれば、福島第一原子力発電所における被曝線量の急増は、事態の重大性を示している。

1 福島第一の一号炉の今期定期検査の具体的な点検、修理計画、被曝線量管理計画について明らかにされたい。
2 この際、給水スパージャーの新型への交換、圧力容器内のノズルコーナー部の修理を行う計画があるとすれば、被曝線量の管理目標値をどのように設定しているか示されたい。
3 一号炉の定期検査計画について、顧問会、各種安全専門審査会、放射線審議会等で、どのような検討が行われ、また、政府としてどのような指導を行つたか明らかにされたい。

  右質問する。