質問主意書

第90回国会(臨時会)

答弁書


第九十回国会答弁書第一号

内閣参質九〇第一号

  昭和五十五年一月二十九日

内閣総理大臣 大平 正芳   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員秦豊君提出土地収用法第百三十一条第一項に係る公害等調整委員会の事務処理等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員秦豊君提出土地収用法第百三十一条第一項に係る公害等調整委員会の事務処理等に関する質問に対する答弁書

一及び二の(12)から(17)までについて

 建設大臣は、収用委員会の裁決についての審査請求を慎重に処理するため、これに対する裁決については、公害等調整委員会(以下「委員会」という。)の意見を聞いた後にしなければならないこととされている。
 建設大臣が委員会に意見を聞くべき時期、その方法等については特段の定めはないが、建設大臣は制度の趣旨に照らして適切な時期に、適切な方法等により意見を聞いており、また、委員会は慎重に審議を重ねた上、建設大臣に対し意見を述べているところであり、これらは、制度の趣旨に照らして適切に運用されている。なお、委員会の意見に反した裁決がなされたことはない。
 土地収用法第百三十一条第一項の規定に類するものとしては、森林法第百九十一条第四項等がある。

二の(1)から(11)までについて

 委員会は、土地収用法第百三十一条第一項の規定に係る事案(以下「土地収用法に係る事案」という。)については、同規定及び公害等調整委員会設置法の規定に従い、その事務処理に当たつているものである。委員会においては、その任務及び権限にかんがみ、委員長及び委員が独立してその職権を行うこととなつている。委員長及び委員の氏名は次表のとおりである。

図 表 1/2

図 表 2/2

 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局が置かれており、事務局内部では、土地収用法に係る事案については、審査官が、命を受けて、分掌することとなつている。なお、審査官のうち三人は、他の職を占める者をもつて充てられるものとされている。

三について

 公共用地の取得に関する特別措置法(以下「特措法」という。)第七条の規定によれば、建設大臣は、申請に係る事業が同条各号のすべてに該当するときは、公共用地審議会(以下「審議会」という。)の議を経て、特定公共事業の認定をすることができることとされているが、これは、建設大臣が特定公共事業の認定をすることが適当であるか否かについて建設省の附属機関である審議会の議を経ることにより、処分の適正を期するためである。
 また、審議会の委員の任命については両議院の同意を要しないが、審議会の委員は、法律、経済又は行政等に関して優れた学識経験を有し、公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者のうちから内閣の承認を得て建設大臣により任命されており、審議会の審議は公正かつ厳格に行われている。
 なお、審議会の庶務及び特措法の施行に関する事務を所管するのは、建設省計画局総務課である。

四について

 御質問の各事案については、委員会において、鋭意審議を重ねた上、建設大臣に意見を述べたところであり、それぞれの事案に応じて、その処理について所要の期間を要したものである。

五について

 新東京国際空港公団起業、新東京国際空港第一期建設事業に関し、千葉県収用委員会が昭和四十六年六月十二日付けで行つた緊急裁決(千収委第七十一号)について戸村一作ほか六十三名が提起した審査請求に関する建設大臣からの意見照会(昭和五十四年十月十八日委員会受付)に対しては、法の定めるところにより、既に、委員会の意見が述べられており、現在、建設大臣において手続を進めているところである。
 なお、土地収用法第四十八条第四項の規定によれば、権利取得裁決を行うに際しては、収用委員会は、土地及び土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償について、当該補償金を受けるべき土地所有者又は関係人の氏名又は住所を確知することができない場合を除き、これらの事項を明らかにして裁決しなければならないこととされている。
 また、特措法第二十条第一項の規定によれば、収用委員会が緊急裁決をすることができるのは、「特定公共事業に係る明渡裁決が遅延することによつて事業の施行に支障を及ぼすおそれがある」と認められる場合に限られるものであり、その他の場合には緊急裁決を行うことはできない。緊急裁決においては、特措法第二十一条第一項に規定する場合に仮補償金を定めることができるものである。
 緊急裁決申立書に緊急裁決を申し立てる理由を記載させるのは、「特定公共事業に係る明渡裁決が遅延することによつて事業の施行に支障を及ぼすおそれがある」ことを明らかにさせるためである。