質問主意書

第89回国会(特別会)

答弁書


第八十九回国会答弁書第一号

内閣参質八九第一号

  昭和五十四年十二月四日

内閣総理大臣 大平 正芳   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員阿具根登君提出中央炉材鉱業株式会社の労使紛争に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員阿具根登君提出中央炉材鉱業株式会社の労使紛争に関する質問に対する答弁書

一について

1(一) 熊本県宇土市境目町三百番地に所在する熊本共英工業株式会社(以下「熊本共英工業」という。)の構内において熊本共英工業の平電炉補修工事に従事していた安田一三外四名(以下「安田等」という。)は、昭和五十四年七月十九日、総評全国金属労働組合熊本地方本部中央炉材支部(以下「支部」という。)を結成し、翌七月二十日、同補修工事の監督に当たつていた井手範夫(以下「井手」という。)に対して「労働組合結成通知書」及び労働時間の明確化等労働条件に関する「団体交渉申入書」を手交した。
 同日から七月二十三日にかけて支部及び支部の上部団体である総評全国金属労働組合熊本地方本部(以下「全金熊本地本」という。)は、井手との間で労働組合の結成等を巡り話合いを行つていたが、七月二十三日、井手は安田等に対し即時解雇の意思表示を行つた。
(二) 右解雇について、全金熊本地本は、七月二十四日、熊本県地方労働委員会(以下「熊本地労委」という。)に対し、熊本共英工業から前記補修工事を請け負つた大阪府大阪市西区土佐堀一丁目六番地十六に所在する中央炉材鉱業株式会社(以下「中央炉材鉱業」という。)を一方の当事者として解雇取消しに関するあつ旋の申請を行い、熊本地労委においてあつ旋が開始されたが、解決する見込みがなくなつたため、熊本地労委は、九月十四日、あつ旋を打ち切つた。
(三) 全金熊本地本は七月二十八日付けで、総評全国金属労働組合(以下「全金」という。)は八月三日付けで、それぞれ中央炉材鉱業に対し「団体交渉申入書」を送付した。
 これに対し中央炉材鉱業は、八月十五日付けの文書で、井手は前記補修工事における数次の請負を経た最終の下請負人であり、井手の従業員である安田等と中央炉材鉱業との間に使用従属関係は存在せず、団体交渉に応ずべき立場にない旨回答した。
 全金は、八月二十一日、東京都地方労働委員会に対して、中央炉材鉱業を被申立人として団体交渉応諾等を内容とする不当労働行為救済の申立てを行い、現在この申立ては同労働委員会に係属中である。
(四) 安田等は、九月十九日、熊本地方裁判所に対して、中央炉材鉱業を被告として労働契約上の地位確認等請求の訴えを提起し、また、全金熊本地本及び全金中央炉材支部は、九月二十日、熊本地労委に対し、中央炉材鉱業を被申立人として解雇撤回等を内容とする不当労働行為救済の申立てを行い、現在いずれも同地方裁判所及び熊本地労委に係属中である。
 政府としては、以上のとおりであると聞いている。
2 団体交渉の当事者適格に関連する安田等の雇用関係については、前記のとおり、現在係属中の訴訟及び不当労働行為救済申立事件において直接の争点とされている問題であり、政府としてはとかくの見解を述べることは差し控えたい。

二について

1 安田等については、健康保険及び厚生年金保険の適用手続はとられていない。
 なお、健康保険あるいは厚生年金保険にあつては、健康保険法あるいは厚生年金保険法で定める一定の要件を満たす事業所に使用される者は、原則として、被保険者となる。
2 安田等については、労働者災害補償保険は適用されている。現在までのところ雇用保険の適用手続はとられていないが、本件安田等を雇用する事業は雇用保険の適用事業であり、安田等はその事業に係る被保険者としての手続がとられるべきものである。
 また、解雇された労働者が、解雇の効力について裁判所への提訴等により当該労働者を雇用していた事業主と争つている場合においては、一定の要件の下に、いわゆる雇用保険の仮給付を受けることができることとなつている。

三について

 中央炉材鉱業については、査察調査を行つていない(熊本共英工業構内の中央炉材詰所については、他の納税者の脱税事件に際して強制調査を行つている。)。
 また、安田等の源泉徴収については、各人ごとの源泉徴収の資料がないため不明である。
 なお、源泉徴収を誰が行つたかは、職業安定法違反の有無には直接結びつくものではないと考える。

四について

 数次の請負によつて行われる建設の事業については、労働者災害補償保険にあつては、元請負人のみを事業主として適用することとされており、雇用保険にあつては、労働者を雇用する個々の事業主ごとに適用することとされている。
 なお、労働者杉本和子から請求のあつた昭和五十四年四月十九日から昭和五十四年六月三十日までの間の療養補償給付については、請求どおり支払を行つているところである。