質問主意書

第87回国会(常会)

答弁書


答弁書第二四号

内閣参質八七第二四号

  昭和五十四年七月十日

内閣総理大臣 大平 正芳   


       参議院議長 安井 謙 殿

参議院議員下田京子君提出農業協同組合等における婦人差別定年制の撤廃に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員下田京子君提出農業協同組合等における婦人差別定年制の撤廃に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 全国の婦人少年室を通じては握した男女差別的定年制・退職制を有する企業(以下「は握企業」という。)のうち農林漁業団体(以下「は握団体」という。)の男女別定年制についてみると、男子の定年年齢については、男女別定年制を有するすべてのは握団体において五十五歳以上の年齢が定められているのに対し、女子の定年年齢については、五十五歳以上の年齢が定められているのは約十五パーセントである。は握団体における男女別定年制は、は握企業全体と比較して、女子の定年年齢について四十歳以上五十五歳未満の年齢を定めているものの割合が大きく、四十歳未満の年齢を定めているものの割合が小さい。
 また、は握団体のうち結婚・妊娠・出産退職制等女子のみに適用される退職制度を有するは握団体の割合は約十五パーセントとなつている。
(2) 労働省においては、昭和五十二年に、「若年定年制、結婚退職制等改善年次計画」(以下「改善年次計画」という。)を策定し、男女差別的定年制・退職制の計画的解消を図つているところであるが、昭和五十三年度は、は握企業のうち女子の定年年齢が四十歳未満である男女別定年制又は結婚・妊娠・出産退職制等を有するは握企業を重点に、改善説明会の開催及び改善勧告文の交付を行うとともに、必要に応じて企業を訪問して個別指導を実施した。
 この結果、昭和五十三年度においては、は握団体のうち男女別定年制を有するは握団体については、その六パーセントが定年年齢を男女同一にした。男女同一にはならないが女子の定年年齢を引き上げたもの又は改善計画を作成したものを含めるとその十パーセントに改善がみられた。また、結婚・妊娠・出産退職制等を有するものについては、その約四分の一がこれらの制度を廃止した。

二について

(1) 農業協同組合(以下「農協」という。)における定年制の実施状況については、農林水産省において実施している農業協同組合一般統計調査等によりは握しているところであり、山形、秋田両県の農協における定年制の実施状況についても承知している。
(2) 山形婦人少年室及び秋田婦人少年室管内のは握団体に対しては、既に当該婦人少年室長から改善勧告文を交付しているが、更には握を進め、必要に応じ改善勧告文を交付するなど適切な措置を採ることとしたい。
(3) 男女差別的定年制・退職制を実施している農協については、改善年次計画に沿つて、今後とも行政指導を積極的に行つてまいりたい。
(4) 男女差別的定年制・退職制の改善については、各企業が所属する事業主団体等を通じての働きかけが効果を上げることが多いと思われるので、改善年次計画を作成したことに伴い、主な事業主団体等に対しさん下企業の男女差別的定年制・退職制の改善について要請したところである。
 また、全国農業協同組合中央会、秋田県農業協同組合中央会及び山形県農業協同組合中央会においては、かねてから農協職員の適正な労働条件につき各般の指導を行つている。更に、農協における労務管理の在り方を研究するため、農協、都道府県農業協同組合中央会、全国段階の農業協同組合連合会等の労務管理担当責任者をもつて構成する農協労務管理研究会が昭和五十二年七月に設けられ、同研究会においては、当面の労務管理上の問題の中から課題を選定し、農協における労務管理の指導方針を検討している。このような状況を踏まえて適切な対処を図つてまいりたい。

三について

 合理的理由のない男女別定年制が速やかに解消されるべきであることは言うまでもない。そのために、政府としては今後とも一層の指導を行うこととしたい。

四について

 行政機能の強化を図るため、婦人少年室に、非常勤職員として婦人少年室協助員(二千九百十名)、特別協助員(百三十九名)及び婦人雇用コンサルタント(四十七名)を配置するとともに、部内職員の振替により地方勤労婦人福祉専門官を配置しているところであるが、今後とも行政需要に対応した体制の整備を図つてまいりたい。
 労働省においては、男女差別的定年制・退職制を有する企業に対してその改善を求める積極的な行政指導を行つており、その結果、指導を開始した初年度である昭和五十三年度においては、指導対象である一万七千百企業のうち六千三百企業が既に男女差別的定年制・退職制を廃止した。男女同一にはならないが女子の定年年齢を引き上げたもの又は改善計画を作成したものを含めると約七千企業において改善がみられた。
 昭和五十四年度以降更に行政指導を強化することとしているので、それによつて企業が自主的に改善することを期待しているが、容易に改善されない場合には、個々の事例ごとに改善について効果的な方法を検討することとしたい。しかし、それと同時に、個別企業に対する指導が効果をもつのは男女平等についての社会一般の意識の向上に負うところが大きいので、今後とも男女差別的制度の解消について社会的気運の醸成に努めてまいりたい。

五について

 第八十七回国会に提出した「昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案」による年金の支給開始年齢の引上げは、近年における平均寿命の伸長、定年年齢の延長、年金制度の成熟化の進行等のすう勢を踏まえ、国家公務員共済組合制度その他の共済組合制度に準じ、かなり長期の経過措置を設けて段階的に実施しようとするものであり、これは、将来における年金給付と掛金負担の均衡等年金財政の健全化を図るため実施せざるを得ない措置と考えている。